ぼくらはみんな『アイヒマンの後継者』だった!? 平凡な市民の残酷さを明るみにした不快な実験結果
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人類はこれまでに数々の大量虐殺を繰り返してきた。ナチスによるホロコーストでは600万人ものユダヤ人が犠牲となり、太平洋戦争を早期終結させるという名目のもとに広島と長崎に原爆が投下された。そして現在もスーダンではダルフール紛争が続いている。これらの虐殺行為は戦時下や特殊な環境で起きたものであって、自分なら絶対にこんな非人道的な行為に加担しないとあなたは思うはずだ。だが、あなたの信念を揺るがす実験がかつて米国で行なわれた。社会心理学者スタンレー・ミルグラム博士による「アイヒマン実験」がそれだ。62.5%の人間は命令されれば、恨みのない他人に対しても暴力行為を働くことをこの実験は証明してみせた。映画『アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発』は「アイヒマン実験」がどのように行なわれたのか、またこの実験結果によってミルグラム博士はどのような人生を歩んだのかを描いている。
1961年8月、米国のイェール大学にて「アイヒマン実験」は実施された。ユダヤ系米国人であるミルグラム博士は、同年エルサレムで開かれたアイヒマン裁判に強い関心を示していた。元ナチスの親衛隊員でユダヤ人を収容所に移送する際に指揮を執ったアドルフ・アイヒマンだが、裁判の被告席に引きずり出された彼は自分の非を認めず「命令に従っただけ」と最期まで主張した。ヒトラーのような権力者から命令されれば、人間は誰しもホロコーストのような大量虐殺に加担してしまうものなのか。ミルグラム博士は人間の持つ残酷性を科学的に解き明かそうとした。
「アイヒマン実験」、またの名を「ミルグラム実験」とも呼ばれるこの実験は以下のようなものだった。まず被験者を2名、教育者と学習者に分ける。教育者が学習者に簡単なクイズを出題し、学習者が回答を間違えると罰として電流が流れるスイッチを押す。最初は45ボルトほどの微量の電流だが、学習者が回答を間違え続けると、次第に電圧が上がり、最終的には450ボルトの電流が流れることになる。誤答した学習者は途中から「痛い」「止めてくれ」と訴えるようになり、スイッチを押していた教育者は実験に立ち会っていた研究者風の白衣の男の顔色をうかがうが、白衣の男が「最後まで続けてください」「責任は大学側が負います」と実験を続けることを促すと、笑ったり首を振りながらもスイッチを押し続けた。ちなみに学習者は博士が用意したサクラ(演技者)であって、実際には電流は流れておらず、痛がっているように芝居を演じていただけだった。この実験の結果、62.5%の人々が最後までスイッチを押し続けたことが分かった。
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