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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > リリスク「韻」と足跡
MC内郷丸「現代アイドルソング学概論」第4回

現体制活動終了! “アイドルラップの先駆者”lyrical school「韻」で辿る彼女たちの足跡

 ラップブームといわれる昨今、アイドルがラップを、ラッパーがアイドルの楽曲を手掛けることは珍しくない。この連載では、アイドルファンで「社会人ラップ選手権」決勝進出経験を持つ、ラッパーのMC内郷丸が“ラッパー的観点”から毎月大量にリリースされるアイドルソングを定点観測。

 2016年12月21日。日本のアイドルラップシーンを担うグループ、lyrical schoolが、2017年2月末のライブをもって現体制での活動を終了することを発表した。来る2月26日、この日を境に、立ち上げメンバーのami、ayaka、meiの3人は卒業してしまう。どうせならayakaさんと一度チェキを撮っておくべきだった……と、僕はいま後悔している。

 いてもたってもいられない気持ちになり、今回の「現代アイドルソング学概論」は、直近でリリースされたアイドルソングではなく、lyrical schoolを扱うことにした。ただ、今回扱うのは、lyrical schoolの歌詞についてである。特にその中でも今回はラップとは切っても切れない関係にある「韻(ライム)」に注目したい。

 まずそもそも「韻」とはなんだろうか。少し前に「彼氏が執拗に韻を踏んできます」というYahoo!知恵袋の投稿が話題になったが、意外と「韻を踏む」って何? と聞かれると、なんて答えればいいのか難しい。多くの場合、「母音が同じ言葉を使って、歌唱にリズム感を出すこと」と説明されている。簡単にlyrical schoolの歌詞から紹介しよう。

「P.S.」(YouTubeより)

“日焼けした白いスニーカーのキャンバス お揃いで買ったビーチサンダル”

 13年9月にリリースされた1stアルバム『date course』(T-Palette Records)に収められた「P.S.」の一節だが、この歌詞の一行ごとの末尾の単語に注目してほしい。「キャンバス」と「サンダル」。それぞれの母音だけを抜き取ると、どれも「あ・ん・あ・う」だけで構成されている。これらの言葉が、区切りのいい場所に決まったタイミングで発音されるように歌詞を当てはめると、ただ言葉をリズムに合わせる以上のリズム感が生まれる、というのが「韻」である。

 ただ、厳密に母音が同じでなくても、実際にラップをしてみるとリズム感が生まれる場合はかなり多いので、「母音が似たような言葉を使って、リズム感を出すこと」くらいに捉えていただければと思う。

 それにしても、紹介した「P.S.」のリリックは素晴らしい。特に引用した一節は、このあと“2人の文字滲む一枚の短冊 固く結んだ ほどけないように”と続く。「キャンバス」「サンダル」「短冊」と韻を踏みながら、ひと夏の思い出の情景をさらっと描ききる。ラップの歌詞を読んでいると、韻を踏むことを優先させ文章として不自然になっていたり、歌詞中の物語がしっちゃかめっちゃかになっているようなものも多いが、こういう自然な韻を歌詞に忍ばせるのはかなり高度なことだと思う。

 ほとんど病気のように、その単語を見つけると、「その言葉でどんな韻を踏めるか」を考えてしまう。先の「キャンバス」「サンダル」だったら、「淡白」「感覚」「腕白」……と、勝手に出てくるのがラッパーのさが。出てきた言葉を使って歌詞を書く。「何と何で韻を踏んでいるか」には、その詞の作者の作家性が如実に出ていると言っても過言ではない。

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