『山田孝之のカンヌ映画祭』第6話 “カンヌの申し子”河瀬直美監督が山田孝之をフルボッコに……
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ここで舞台は突然、奈良へ飛ぶ。尋ねた事務所に現れたのは、映画監督の河瀬直美。
『萌の朱雀』(1997)でカメラドール(新人監督賞)を受賞して以来、7度もカンヌに招かれ、『穢の森』となぜか(?)似ているタイトル『殯の森』ではグランプリを受賞、自身も「カンヌに育ててもらっている」と公言している“カンヌの申し子”で、近頃発表された次回作『光』も、カンヌに行く可能性は非常に高い。とにかく今の日本映画界でもっともカンヌで活躍している、いや、失礼な言い方をしたら、カンヌ(などの)映画祭でしか活躍していないと思ってしまうほど、カンヌ純度の高い監督だ。
この番組での山田のような理解しがたい人間に制作現場やスタッフが振り回される『道/子宮で映画を撮る女』という短編を、かつて山下は撮っているが、それのモデルはかつての河瀬ではないかと言われているし、今回の企画自体、その延長線上にあるのではないかと思われる。
そんな裏ドラのような人物を、3人は訪ねたのだ。しかも3人が着ているTシャツの胸には「I▽(ハートマーク)CANNES」の文字が躍っている。何も言われなければいいのだが……と思う間もなく、対面と同時に「このTシャツどうしたの?(笑)」と河瀬に気付かれる。そりゃそうだ。気付かないわけがない。
しかしながら驚いたのは、山下が口ごもりながら「僕と山田君でカンヌに行って来まして……」と言葉を選びながら説明しかけるや否や、「これ今年(2016)のやつ!」と、カンヌ映画祭シネフォンダシオン部門で審査員長を務めた時のポスターを見せてくれる。
シネフォンダシオン部門とは学生の作品に対する賞。
つまり、山田一行が目指すカンヌ映画祭で、もはや河瀬はすでに学生相手とはいえ、審査員長を務めるほどの、いわば「カンヌ先生」、もはやカンヌ側の人なのだ。
相手が悪すぎる。かつてスピルバーグから送られた「To Naomi, you inspire me!」というサインを見せてくださる河瀬先生。つまり「あんたに刺激を受けた」と、あの巨匠が褒めている言葉を、ご丁寧に自ら朗読してくださる。
ほかにもニコール・キッドマンの「Lovely,Naomi lovely」とか、自身のカンヌっぷりを惜しげもなく紹介してくださるという、ある種、地獄のような状況。
「カンヌ暑くなかった?」「カラッとしてるのね、夏は」と、とにかく端々にカンヌ先生の「カンヌ有段者」としての言動がちらつく。「カンヌ」というダンジョンに現れた強力なボスキャラだ。
まだ、訪問の趣旨は伝えていない。
ここで手土産を差し出す山下。
時間を割いてくれた先輩への配慮として当然の気配りかと思いきや、紙袋から出てきたのは例の「アイラブカンヌ」Tシャツ。「一緒に着た方がいいの?(笑)」と一応冗談めかしてはいるものの、冗談を言える河瀬の動じなさが逆に恐ろしい。
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