深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.413
日本は格差社会ではなく、すでに階級社会だった!? 『愚行録』が暴くこの国の見えないヒエラルヒー
2017/02/11 21:00
#映画 #パンドラ映画館
外部生ながら、真っ先に内部生グループに昇格した夏原友季恵(松本若菜)。誰とでも気さくに接し、育ちの良さを感じさせる人気者だった。
友季恵には自分がえげつないことをしているという自覚はまるでなく、自分が欲しいものは素直に手に入れ、逆らう者は容赦なく叩き潰すという行為が無意識レベルでできてしまう。多分、友季恵は自分がなぜ殺されたのか、その理由を知らないまま死んでいったはずだ。殺人鬼から愛する我が子を最期まで庇おうとした悲劇のヒロインとして、同窓生たちの記憶に残ることになる。生まれつきの悪女である友季恵役にオーディションで選ばれたのは松本若菜。成海璃子主演の官能作『無伴奏』(16)では池松壮亮の美しい姉を演じており、二面性のある美女役でこれから活躍の場を増やしてきそうだ。
週刊誌記者として事件の真相を追っていく主人公役の妻夫木聡とその妹役の満島ひかりは演技力に定評があるが、友季恵と一緒に殺されることになる大手不動産会社勤務の夫・田向役の小出恵介、田向にとって“都合のいい女”である恵美役の市川由衣ら助演陣も、実に素晴しく腹黒い人間像をはつらつと演じてみせる。彼らの生き生きとした悪人顔を見ていると、俳優として裏表のあるキャラクターのほうが薄っぺらい善人役よりも演じがいがあることが、とてもよく分かる。
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