“AKBオワコン”説への秋元康からの回答!?『豆腐プロレス』にショービジネスの本気を見た
#豆腐プロレス
試合後、楽屋ではハリウッドJURINAが激怒してゴミ箱を蹴飛ばし、エメラルドHARUKAを怒鳴りつける。これに対しエメラルドHARUKAは、律儀にゴミ箱をもとに戻したあとで、「気づいとらんとでも思っとるん?……治っとらんやん、脚」と博多弁で言い放つ。ハリウッドJURINAは、脚の怪我を隠して試合に出ていたのだ。WIPの矢崎英一郎も「怪我をかばいながら戦えるほど、この世界は甘くない」「客はお前たちのガチな試合を観に来ているんだ」と一喝。しかも「工事現場同盟」のメンバーたちにこの怪我のことを伝え、暗に右脚を狙わせようとする。これに対して工事現場同盟のメンバーたちは「そんなことしなくても実力で勝てます!」と声を荒らげる。リング上では派手なメイクと言動で悪役に徹していた工事現場同盟のふたりの、本気さを感じるシーンだ。
偶然、この情報を聞いていた木下百花(役名同じ)は謎めいた表情を浮かべる。リング外でそれぞれの思惑が交錯する展開には「おおおお! 面白くなってきたああああ!」と思わず興奮してしまった。
プロレスという競技は、“八百長”と揶揄されがちなスポーツエンターテインメントである。実際、「プロレスは勝負が決まったショービジネスである」という暴露本もあるほどだ。そんないかがわしさもあってか、「どこまでがガチか?」といった、ファンや批評家による言説が他のスポーツに比べ、異常なまでに肥大化している。
そして、アイドル、特にAKB48もまた、プロレスと同様の「本当は全部ヤラセなんじゃないのか」という批判を受け続けてきた。毎年行われる選抜総選挙は、票数の操作がされているのではないかとか、メンバー同士のじゃんけんのみで選抜メンバーを決める「じゃんけん選抜大会」も、あらかじめ結果が決まっているのではないかとかいったものだ。総合プロデューサーの秋元康はAKB48について、「ガチである」という姿勢を貫いているが、それもネタにされてしまっているのが現状だ。
ところどころで登場するWIPの社長・矢崎の発言には、秋元康の「ガチ/ヤラセ」に対する考えがそのまま乗り移っているようにさえ思えた。もともと宮脇の父・ウロボロス洋平(菅原大吉)とともに“夢”を追いプロレスをやっていたが、いまはプロレスを“現実”だと言い切って社長業に取り組む矢崎の姿に、秋元康をそのまま重ねてしまう。
かつてAKB48で総監督を務めていた高橋みなみは、雑誌のインタビューで「いまはAKBの少年マンガ的な世界観よりも、乃木坂46のような少女マンガ的な容姿端麗が好まれる時代が来ている」と述べている。この高橋の言う「少年マンガ的な世界観」がそのまま「豆腐プロレス」と重なるわけではないが、もしかしたら秋元はこの「豆腐プロレス」で、現在“オワコン”扱いされているAKB48のショービジネスの面白さについての考えを、本気で主張しようとしているのではないか。
そう考えると、プロレスを“現実”だと言い切る矢崎の言葉にも、深い意味があるように思えてくる。次回以降の、矢崎の発言にも期待して見ていきたい。
(文=MC内郷丸)
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