深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.412
矢口史靖監督流“楽しい”ディザスタームービー!『サバイバルファミリー』が描く電気のない世界
2017/02/05 21:00
#映画 #パンドラ映画館
旅先で遭遇するアウトドア志向のファミリー(時任三郎、藤原紀香)。いけすかないけど、鈴木家にとっては大切な出会いだった。
新しい環境に柔軟に対応するようになっていく息子と娘に対し、サバイバル能力のない父親が足手まといになっていく展開は、舞台出身の演技派・小日向文世の巧みなダメ人間ぶりもあって、苦い切実さがある。そんなダメ親ながら旅を続けていく中で、父親は自分のかっこ悪さを受け入れ、ダメ親なりに家族のために懸命に体を張る。電気が使えた頃はバラバラだった家族が、サバイバルツアーを通してゼロから再構築されていく。利便性のみを追求する現代人への社会風刺に加え、これまで若者の成長談を描いてきた矢口監督が“家族の再生”をテーマに新しいステージに上がってきたことを感じさせる出来映えだ。
まったくの余談だが、大停電や大災害が起きて、しばらくするとその地域では出生率が上昇すると米国では言い伝えられている。電気が使えないことから、長い夜を持て余した男女のコミュニケーション時間が増えるに違いないという発想から生まれた都市伝説なわけだが、本作でも夫婦役を演じた小日向文世と深津絵里との闇夜のラブシーンがあってもよかったと思う。電気のない世界、意外と楽しいかもしれない。
(文=長野辰次)
『サバイバルファミリー』
原案・脚本・監督/矢口史靖
出演/小日向文世、深津絵里、泉澤祐希、葵わかな、時任三郎、藤原紀香、大野拓朗、志樽淳、渡辺えり、宅麻伸、柄本明、大地康雄
配給/東宝 2月11日(土)より全国ロードショー
(c)2017 フジテレビジョン 東宝 電通 アルタミラピクチャーズ
http://www.survivalfamily.jp
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