「知らないし、興味もない」──『この世界の片隅に』は“元アウトローのカリスマ”瓜田純士の心を動かすか
#映画 #インタビュー #瓜田純士 #この世界の片隅に
――絵についてはどのような印象を?
瓜田 長編のアニメってたいてい、絵は変わらないまんま誰もしゃべらず音楽だけ流れるシーンとかがあって、どうしても退屈しちゃうんだけど、この作品に関しては、飽きることはまったくなかったですね。常に誰かがしゃべってるか、何かが動いてる。だけど不思議と、目は疲れない。絵のタッチはシンプルだけど、動作や表情の変化をきめ細かく描き、そこに濃厚な会話とリアルな効果音を加えることで実写のように見せてしまうんだからすごい。アニメだからこそ実現できた素敵なシーンも数多くありましたね。
――それは、たとえば?
瓜田 木にブラ下がってた障子のマス目に、ずすの成長期を追う絵がポッポッポッと浮かんでくる場面なんかは、グッとくるものがありました。あそこですずが発する言葉がまた、心の成長を表してて感動的なんですよ。心の動きってことで言うと、すずと小姑の関係性の変化も丁寧に描かれててよかった。で、一瞬平和な空気が流れた直後に、あることが起きるわけですが、あの場面は登場人物も、見てる観客も、同じように驚いたんじゃないでしょうか。平和な時代に生まれてよかった。鑑賞中、何度もそう思いましたし、あの時代を生きたすべての日本人に改めて敬意を払いたくなりましたね。
――今のところベタ褒めですが、気に入らなかった点は?
瓜田 ちょっと時間が長かったかな。ちゃんと、おしっこしてから見るべきでした。
――本作を総括すると?
瓜田 これはきっと戦争映画じゃなくて、その時代に広島の呉に嫁いだ、絵を描くことしか取り柄のない、ごくごく普通の女の子の物語なんだと思います。嫁いだ先でいろいろあったけど、逃げずに健気に生き抜いた。そこを捉えて、そこだけで物語にしたのがすごいなと思いますね。
――見てよかったですか?
瓜田 よかったです。最初は「よりによって体調の悪い俺を、一番前の一番見づらい場所に座らせやがって!」という怒りがあったし、「あとで必ずケツを取ってやる!」と思ってたけど、途中から物語に没頭し、そういう感情を忘れてしまった。こんな良質な映画を見せられたら、そりゃ人をイジメようっていう気持ちは消えてなくなりますよ。
* * *
瓜田から爆弾を落とされることを覚悟していた記者だが、映画があまりにも素晴らしかったため、運よく難を逃れたのであった。
(取材・文=岡林敬太)
『この世界の片隅に』瓜田夫婦の採点(100点満点)
純士 58点
麗子 3点
※瓜田純士&麗子 Instagram
https://www.instagram.com/junshi.reiko/
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https://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/
●『この世界の片隅に』
原作/こうの史代 監督・脚本/片渕須直 音楽/コトリンゴ
出演/のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、藩めぐみ、岩井七世、牛山茂、新谷真弓、澁谷天外
配給/東京テアトル 全国公開中
c)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
http://konosekai.jp
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