「知らないし、興味もない」──『この世界の片隅に』は“元アウトローのカリスマ”瓜田純士の心を動かすか
#映画 #インタビュー #瓜田純士 #この世界の片隅に
――いかがでしたか……?
瓜田 いやぁ、よかったです。敬礼もんですよ。映画のタイトルとポスターの絵を最初に見た瞬間、どうせメンヘラ女が主人公の作品だろ、と思ったんですよ。自分探しの心の旅が延々と続くような、夢見がちなオタク向けのスーパーつまんない作品なんだろうと思ってた。ところが、いざ見始めたら、小姑との確執を描いた橋田寿賀子的ドラマのアニメ版か? という展開になりつつも、中盤あたりからは、いやこれ、冷やかしちゃいけないようなスーパーヘビーな内容じゃねえか、となって、終わったときにはスクリーンに向かって思わず敬礼してましたよ。すげえいい映画でした。37度3分の熱がある俺が言うんだから間違いないです。
――どこがよかったですか?
瓜田 まず、心の機微の捉え方がめちゃくちゃ上手い。普段はおっとりしてる主人公のすずが、何度か感情的になる場面がありましたよね。「帰る」と言い出したり、消火しようとムキになったり、自分で髪を切ったり、サギを追いかけたり……。あんな風に感情がスパークする瞬間って、どんな一般ピープルにも必ずあるじゃないですか。その切り取り方と表現方法が非常に巧み。途中、不倫っぽくなるシーンもあったけど、あのときの男女の心理描写も生々しくてよかったです。
――どんな描写に生々しさを感じましたか?
瓜田 初恋の人に再会し、そのもどかしさを旦那のせいにしてキレる嫁もリアルだったし、心配しつつも信頼したくて嫁を納屋に送り出した旦那の気持ちや、幼馴染の前だといつもの嫁じゃなくなることに対する旦那のヤキモチの焼き方とかも、同じ男として「わかる!」って感じの絶妙さ。アニメとは思えないというか、終始、役者の芝居を見てるようでした。声優の力も大きいのかな。特にすずの声を担当した声優が、マジですごい! あの朴訥とした語り口で、食べ物の名前をつぶやくだけで、美味しさと貴重さがじんわりと伝わってくるというね。
――あれ、「のん」こと能年玲奈の声です。
瓜田 へぇ、そうなんですか。あの広島弁がとにかく神がかってて、ただごとじゃなかったですね。のんに限らず、声優陣はみんなよかった。難しいと思うよ、あの時代の広島弁って。
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