テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第144回
逃れられない母娘関係の呪縛……『お母さん、娘をやめていいですか?』が描く、“愛情”という名の暴力
2017/01/27 14:10
#ドラマ #NHK #波瑠 #テレビ裏ガイド #てれびのスキマ
「僕も母の顔色ばっかり見る子どもだったんで、君のことが全部わかる」
お互いがお互いを「全部わかる」と思い合う関係。それは一見、幸福だが、一皮むけば恐怖にほかならない。気持ちなんて、自分にだってわからない。にもかかわらず、愛情さえあれば相手の気持がわかる、と錯覚してしまう。
「全部わかる」は、「そんなはずじゃない」に一瞬で変容する。自分が思っている相手の像とは違う言動を目にしてしまったら、「そんなの、本当のあなたではない」と思ってしまう。
それは愛情の暴力だ。そこに「愛しているから」とか「思いやっているから」という“正義”が入っているから、たちが悪い。
悪気のない正義ほど、強く、怖いものはないのだ。お互いがお互いを好きすぎることから生じる歪み。それはあまりにも切なく、恐ろしい。ホームドラマであり、母娘の“ラブ”ストーリーであり、サイコ・ホラーかのようでもある。
母娘は、ついにぶつかり叫び合う。
「あなたの気持ちをこの世で一番大事に思っているのは、ママなのよ!」
「それ、私の気持ちじゃない!」
彼女たちの大きな目が、震えている。
そう、このドラマは目が印象的なドラマだ。みんな目が強い。斉藤由貴の常に狂気をはらんだ目と、波瑠の常に何かに戸惑っているような目、そして、柳楽優弥の力強く見据えているようで、どこかくすんでいる目。
第3話以降、母の「暴走」が本格化していくという。そのとき、彼女たちの目は、どのように変化していくのだろうか?
(文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/)
最終更新:2019/11/28 19:46
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