日活ロマンポルノは現代社会にどう蘇ったのか? 園子温が撮った極彩色の悪夢世界『アンチポルノ』
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『牝猫たち』より、デリヘルで働く女たち。派遣型風俗は元手が掛からず、新規参加しやすいいビジネスだ。
今回の「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」に参加した5人の実力派監督たちの中で、最も若い白石和彌監督の『牝猫たち』(現在公開中)も見逃せない好編となっている。プログラムピクチャーとしての日活ロマンポルノをリアルタイムでは体感していない1974年生まれの白石監督だが、ピンク映画界で問題作を連発した若松孝二監督の弟子だったことで知られる。性事情や犯罪を絡め、社会の底辺で生きる人々をリアルに活写する作風は、師匠譲り。また、『牝猫たち』はロマンポルノの巨匠・田中登監督の『牝猫たちの夜』(72)へのオマージュ作ともなっている。田中監督はロマンポルノ史に残る名作『(秘)色情めす市場』(74)や『人妻集団暴行致死事件』(78)に加え、実録犯罪映画の金字塔『丑三つの村』(83)も残している。若松孝二や田中登といった大監督の系譜を受け継ごうという、白石監督の意欲が『牝猫たち』には感じられる。
洗練さからは遠い街・池袋を舞台にした『牝猫たち』は、デリヘルに勤める3人の女たち、雅子(井端珠里)、結依(真上さつき)、里枝(美知枝)の物語だ。追加料金を支払えば、本番サービスもしている違法風俗だが、3人がデリヘルに勤める理由はそれぞれ異なる。子持ちの結依は手っ取り早く食べていくため、人妻である里枝は夫以外の男性との繋がりを求め、そして住所不定の雅子は居場所を提供してくれる一夜限りの相手を探している。キャバクラだと客との会話に神経をすり減らすが、デリヘルなら無駄話はそこそこに男の下半身を気持ちよくさせれば、とりあえず喜んでもらえ、対価を受け取ることができる。この分かりやすさが、雅子たちには心地よかった。犯罪と地続きなグレーゾーンの世界に生きる雅子たちだが、どこか自分のすぐ隣りにいそうなとても身近な存在に思える。男たちがネット上のアクセス数に一喜一憂しているのに対し、肌で感じる痛みや喜びに忠実な彼女たちの生き方は、野良猫のようではあるがどこか羨ましくもある。
ロマンポルノに初挑戦した5人の監督たちの中で、いちばんロマンポルノに縁の深いのが中田秀夫監督。中田監督は「にっかつ撮影所」出身で、SM映画の名手・小沼勝監督の助監督も経験している。『ホワイトリリー』(2月11日公開)は中田監督にとって、30年ごしとなる念願のロマンポルノ監督デビュー作だ。『仮面ライダーW』(テレビ朝日系)で人気アイドル・園咲若菜を演じた飛鳥凛を主演に起用し、往年のロマンポルノファンも満足させる出来映えとなっている。
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