元ハリガネロック・ユウキロックが語る、お笑い界で「迷子」になった芸人がすべき“決断”
#お笑い #本 #インタビュー
■ナイナイ岡村が「ガム」のネタにこだわったわけ
――「芸人になる」というハードルが高いのか低いのか、よくわからない時代になったような気がするんです。面白さのハードルというか……。
ユウキロック 何に関してもそうだと思うんですけど、要するに「フリ」と「オチ」なんですよね。そこがわかれば、お笑いのことがわかってくる。それをわからない人が、養成所にもたくさんいる。みんなオチばっかり気にするんですよ。フリの重要性がなかなか理解してもらえない。たとえばライブのコーナーで、テーブルクロス引きがあるとするじゃないですか。もし、できるなと思えば「うわぁ、こんなんできませんよ」ってフるべきやし、逆に絶対できひんと思ったら「簡単ですわ」って。それを最初に自分でパッと判断して、逆にフっていく。オチに向かっていくのはそこからです。漫才やコントだけじゃなくて、コーナーもVTRもみんなそう。それがわかればネタは簡単に作れるようになるし、ある意味、そこからですよ。個性なんてものが出てくるのは。それが本当に難しいんですけど。
――本にも書かれていましたが、ハリガネロックは、とにかく目の前のお客さんにウケることを一番に考えていたと。
ユウキロック 仕事が欲しかったし、そのためには、今ここにいる人たちをどれだけ笑わせられるのか。それこそが正解だと思っていました。
――芸人さんは、マーケティングをするべきだと思いますか?
ユウキロック するべきだと思います。これも本には書きませんでしたけど、僕にその意識を植え付けたのって、ナイナイの岡村(隆史)さんなんです。僕が1年目くらい、ナイナイさんもまだ大阪時代に、岡村さんはずーーーーっとガムのネタやってたんですね。岡村さん自身がガムになるネタ。どのチャンネルを見ても、そのネタばっかりやってる。正直、そんなめっちゃ面白いわけじゃない。ほかに面白いネタたくさんあるのに。あるとき、やしきたかじんさんの前でそのネタやって、たかじんさんに言われるんです。「ナインティナイン、そのネタおもろいんか?」って。そしたら岡村さん「面白くないです」って。「じゃあ、なんでこのネタやってんのや?」「これやってたら、いつか『あぁガムの兄ちゃんや』って覚えてもらえるじゃないですか。だから漫才やらずに、このネタばっかりやってるんです」。印象を付けるためだけに、そのネタをずっとやり続けてた。そういう方法もある。ただ、岡村さんくらいのレールに乗ってないとできませんが(笑)。だから今、何かに特化する人が多いのもそうなんやな、って。
――飽きられる怖さはないですか?
ユウキロック これがね、またその時代も変わってきていて、それだけでは残れなくなってる。結局また同じこと言ってしまいますけど、本当に今が一番大変なんちゃうかな。なんとかそれでテレビに出ても、すぐ消えてしまう。去年もたくさんそういう芸人いましたけど、その中でひとりだけ残ったのが平野ノラだと思うんです。球打ちながら、その上で、どうやって残るのかまで考えなきゃいけない。
――テレビ、劇場、インターネット……芸人さんの活躍する土壌はどんどん広がっていると思いますが、これからの芸人さんは、どのようにそのバランスを取るべきだとお考えですか?
ユウキロック 僕、今44歳なんですけど、もし20代に戻ったとして一番キツイと思うのは、この若い時期の大事な時間を何に充てるべきなのかってことなんです。本当にわかりづらい。たとえば、YouTubeでネタやり続けたら当たるのか?
――みんな「迷子」ですね……。
ユウキロック 逆に、なんでもやったほうがいいのかもしれない。いま自分で「なんでも屋」って名乗ってますけど、結果を残せれば、別に肩書なくてもできることは多いので。僕も芸人時代に“家電”や“節約”でテレビ出させてもらったし、それこそ家事が得意でブレークする人もいる。
――もともと本気で好きかどうかが問われそうです。
ユウキロック 本当は何がしたいのか、突き詰めればわかると思う。「テレビに出たい」んだったら、選択肢は変わってくる。なんなら、芸人じゃなくてもいい。「お金欲しい」もそうですよね。自分の欲求を明確にしたら、道も見えてくるんじゃないでしょうか。自分への問いかけをね。
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