元ハリガネロック・ユウキロックが語る、お笑い界で「迷子」になった芸人がすべき“決断”
#お笑い #本 #インタビュー
■「お笑い講師」としての指針
――ユウキロックさんは、いま講師としてお笑いを教えてらっしゃるんですよね。難しさはないですか?
ユウキロック 難しいですけど、やるにあたって指針のようなものは決めました。
――それはどのような?
ユウキロック あの、レギュラーっているじゃないですか。レギュラーはあるある探検隊で売れましたけど、あれ当時、劇場の支配人が「あんなおもんないことやんな」って言って、彼ら自身もずっと封印していたネタなんですよ。でも、暮れの『オールザッツ漫才』(毎日放送)という漫才コンテストの番組で、久しぶりにあるある探検隊をやったんです。それを『めちゃイケ』(フジテレビ系)のスタッフが見ていて、「笑わず嫌い王」にブッキングされて、売れた。支配人の判断は間違いとは言わないですけど、やっぱりスタッフや講師たちは「怒る」人が多い。僕は、みんな人生賭けてやってると思うので、自分がそれを壊したくないんです。やりたいことは好きにやってくれと。技術は高いけど個性がない人には個性の出し方を教えるし、技術ないけどすごい突出したことやっている人には、それをわかりやすくするための技術をしっかり教える。だから、講師になってから、怒ったことは一回もない。
――なるほど。
ユウキロック とはいいつつ、吉本以外は、スクール入った1年後に契約うんぬんがあるんですよ。契約してもらえないと、せっかく通ったのにフリーになっちゃう。そういうこともあるんで、生徒たちには半年くらいたったら聞きますね。「契約のことを、どう考えてるのか?」って。契約を勝ち取るためには、技術つけたほうが絶対いいから。まずは契約を押さえて、それからやりたいことをやればいい。僕、人力舎さんでも講師やってるんですけど、たとえば50組芸人がいて、いい線いってるなと思っても、全部が全部契約できるわけじゃないんですよ。物理的に事務所が面倒を見きれないので、毎年決まった人数しか取らない。だから、そのへんは、現実に即したアドバイスをするようにはしていますね。そのネタは遠回りなのか、近道なのか。「10年後に受け入れられるかもしれへんけど、今は厳しいかもしれへん。それでもやるか?」は言います。それでもやると言うのなら、徹底的にサポートはしますけど。
――お笑い界は、特に遅咲きの方も多いですからね。
ユウキロック 僕らの同期に(ハリウッド)ザコシショウがいるんで。ザコシショウは去年『R-1』獲りましたけど、僕が養成所で見たネタの方向性と、まったく変わってないんですよ(笑)。ずっとあんなんやってる。
――世に言う“ザコシショウショック”。
ユウキロック あれはもう磁場ですね。お笑いが一周したタイミングというのもあるでしょうし、その場所にいたお客さんが、お笑い慣れしてるというのもあったと思う。お笑い慣れというのは、頭の中にフリが作れるということ。ザコシショウを知ってて、ケンコバと同期で、20年ずっとこんなことやってて……っていうフリがあってあれを見たら、面白いじゃないですか。でも、ザコシショウは今の事務所が3つ目で、しかも結果を出してる。すごい。一概に、すべてを否定できません。
――ずっと続けることのすさまじさはありますね。
ユウキロック だから、僕が怒るとしたら……やっぱり本気でやってなかったら、注意はします。授業では「みんなが、この本の俺くらいの気持ちでやってると思って話してるからね」って言います。
――おおお(笑)。ユウキロック先生から見て、いまお笑い芸人を目指している子たちは、どんなふうに映りますか?
ユウキロック ライトですね。去年の夏に『ハイスクールマンザイ』というイベントの審査で高校生の漫才をたくさん見せてもらったんですけど、特にそういう印象を受けました。漫才コントがそうさせたのかなぁ。
――漫才コントですか?
ユウキロック 漫才コントの基本がわかりやすいんでしょうね。「これ今度やりたいからちょっと練習させて」っていうフォーマットがあるじゃないですか。みんながその型を知っちゃった。楽な型を知っちゃった。でもね、実際にネタを作るときって、もっと細かく調べるんですよ。そこが足りないから薄くなる。
――「っぽい」感じにはなるけど……。
ユウキロック 自分の頭の中だけで完結してしまってるんですね。もっと細かくフリを入れたりしなきゃいけないところを、してなかったりする。小説家が小説を書くときに、どんだけの資料を集めるかっていう話と一緒なんです。資料が全然ない中で、書き始めないじゃないですか。どうしてそれを漫才でできないのか? って。僕も死ぬほど調べましたし、このタイミングでダンスしたら面白いって思ったら、死ぬほどダンスも練習しましたし。ダンスなんか大っ嫌いですよ、ホンマは。だけど、ウケる思うから練習できる。
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