また、あいつらが“仕掛けて”きた! 気持ちよく振り回されたい『山田孝之のカンヌ映画祭』
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いまや、カメレオン俳優として名をはす実力派俳優・山田孝之。
彼が2016年の夏に「カンヌ」で賞を獲ることを決意、その決意から思い立った行動を描くドキュメンタリー(風)番組。果たして、山田は「カンヌ」を獲れるのか? どんな映画を作るか? 何をしでかすのか?
一見、どう見ていいか迷う、この番組。放送枠や監督(山下敦弘、松江哲明)、主演が同じことから、2015年に同局で放送された『山田孝之の東京都北区赤羽』と同じ手法となる作品と見ていいだろう。
「手法」という言い方をさせてもらったのは、これらが、ドラマでもドキュメンタリーでもない、いわゆる「フェイクドキュメンタリー」「モキュメンタリー」と呼ばれる特殊な観せ方の作品だからだ。
『東京都北区赤羽』は、もともと清野とおる原作のエッセイ漫画で、作者本人が実名で登場、清野自身の赤羽での実際の暮らしをもとに描いた作品だ。
ここからは勝手な想像なのだが、いわゆるノンフィクション漫画である『東京都北区赤羽』をドラマ化するにあたり、そのまま脚本化することに抵抗があったのではないだろうか?
山田に漫画のままの「主人公・清野」を演じさせ、実在する街の人をそれぞれ役者に演じさせるだけの「ドラマ」にしてしまったら、原作の持つリアルなざらついた面白さはなくなる。
そうなれば、あの漫画の面白さである臨場感だったり、出会いの化学反応だったりを「再現」することは難しい。近いところではドラマ『孤独のグルメ』(同)が、原作の話を一切使わず「なぞる」ことをしなかったように、それを一歩進めて、新しいアプローチとして、山田自身を新しい「主人公」として、あの赤羽という街に降り立たせてみたのではないのだろうか。
それは、山田の発案なのか、監督や、制作の発案なのかはわからないが、結果的にあの「ドラマ」は(あえてドラマと呼ばせてもらうが)、後半、妙なグルーブを産み、新しい感覚と興奮を我々に味わわせてくれた。それは原作の漫画とはもちろん違うが、原作の新鮮味に負けぬ鮮度だったと思う。
この作品で、東京ドラマアウォード演出賞を受賞した監督は、一人が山下敦弘。『苦役列車』(12)や『天然コケッコー』(07)など、観る人によっては「何も起こらない映画」という印象を抱くであろう、いわゆるそういう映画の人だ。そしてもう一人が、主にドキュメンタリーで活躍する松江哲明。
これに山田を加えた、この3人だからこそ産み出せた空気だったはずだ。
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