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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.408

スコセッシ監督がついに完成させた宗教時代劇! 神はこの世に存在するのか『沈黙 サイレンス』

chinmokumovie03ハリウッドデビューを果たした窪塚洋介。物語の核となるキチジロー役のオーディションは浅野忠信も受けていた。

 ロドリゴの目線でドラマは進むが、本作の実質的な主人公と言えるのは窪塚洋介演じるキチジローだ。マカオでの出会い以来、キチジローは誰よりも長くロドリゴと接し続けるが、小心者ゆえにキチジローは「踏み絵」を迫られると真っ先にキリスト像を踏みつけ、ロドリゴを裏切ってしまう。そして裏切る度に、キチジローは泣きながら懺悔を求めてロドリゴの後を追っていく。イエス・キリストを売ったユダのように、キチジローもまたどこにも自分の居場所がなかった。キチジローという存在が、ロドリゴを悟りの境地へと導くことになる。またドラマが進むにつれ、ロドリゴが信じているキリストの教えと日本に根づいた切支丹の信仰は異なるものであることに気づかされる。日本人にはキリスト教を信じさえすれば病気や飢えや年貢の取り立てもないパライソに行け、信じないものはインヘルノに墜ちるという楽園願望&地獄への恐怖心が根底にあり、絶対的な存在である創造主としての神を敬う西洋人とは大きな隔たりがあった。ロドリゴが信じる神と日本人に受け入れられている神はあまりにも違いすぎた。

 それでもロドリゴは、恥も外聞もなく自分に救いを求めてくるキチジローの懺悔を聞き入れようとする。心の弱い人間、心に傷を負った人間こそ、宗教をいちばん必要としているからだ。異郷の地で祈りを捧げるロドリゴに対し、神は沈黙で応えるだけだった。ロゴリゴも、そして現代を生きる我々も、そんな静寂なる世界にただ耳をじっと傾けるしかない。
(文=長野辰次)

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『沈黙 サイレンス』
原作/遠藤周作 監督・脚本/マーティン・スコセッシ 脚本/ジェイ・コックス 撮影/ロドリゴ・プリエト
出演/アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバー、窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ
配給/KADOKAWA 1月21日(土)より全国ロードショー
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http://chinmoku.jp

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