スコセッシ監督がついに完成させた宗教時代劇! 神はこの世に存在するのか『沈黙 サイレンス』
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時は17世紀。ポルトガルの若き司祭ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)とガルペ(アダム・ドライバー)は、鎖国中の日本への危険な航海に向かう。ロドリコとガルペの恩師である宣教師フェレイラ(リーアム・ニーソン)が日本で棄教したという知らせを聞き、それが真実であるかどうかを確かめるためだった。いずれにしろ、日本で消えかかっているキリスト教の灯火を自分たちが守らなくてはという使命感に燃えていた。マカオで出会った日本人・キチジロー(窪塚洋介)の案内で、ロドリゴたちは無事に長崎の小さな集落に上陸。江戸幕府による厳しい取り締りの目を盗んで、モキチ(塚本晋也)やイチゾウ(笈田ヨシ)ら隠れ切支丹がキリスト教を信仰し続けていることを知り、ロドリゴは胸を熱くする。貧しい彼ら百姓たちの暮らしに、キリストの教えが少しでも救いになればいい。ロドリゴは布教活動に励むが、その純真さがモキチたちの村に災いを招くことになる。
当時の日本は、キリスト教を信仰する農民たちを中心にした一揆「島原の乱」が鎮圧されて間もない頃。キリスト教の司祭や隠れ信者がいることを密告したものには莫大な報酬が与えられるお触れが出されており、モキチたちの村にも信者狩りの手が伸びる。キリスト像を踏むことができない者は切支丹だと見なされる「踏み絵」が行なわれ、これを拒否したモキチとイチゾウは水磔に処せられる。絶命するまで何日間も荒波に洗われ続ける恐ろしい処刑法だ。村を離れたロドリゴはモニカという洗礼名を持つ娘(小松菜奈)が簀巻き状態で海に棄てられる様子も目の当たりにする。さらには、汚物で満たされた穴の中に逆さ吊りにされる穴吊りの刑が待っていた。吊るされた者の精神をじりじりと蝕むえげつない拷問だ。ロドリゴの身代わりとなって、罪なき信者たちが次々と処刑されていく。キリストの教えを知らない日本人たちを救いにきたつもりのロドリゴだったが、逆に自分が日本人を苦しめている事実に苦悶する。なぜ神は奇蹟を起こし、神の子である彼らを救おうとはしないのか。ロドリゴは心の中で叫び続ける。
緑豊かな台湾でのロケーション撮影が、江戸時代の日本の風情をうまく感じさせる。撮影中は数多くのトラブルに見舞われたそうだが、スコセッシ流宗教時代劇として違和感のない仕上がりだ。様々な拷問刑を考え出した冷血な長崎奉行として、ロドリゴたちから恐れられる井上筑後守を演じるのはイッセー尾形。残酷さとは無縁そうな、とても気さくで農民想いの優れた役人として描かれている。江戸幕府は農民たちを一方的に搾取していたわけではなく、社会秩序を守るためにキリスト教とポルトガル人を日本から追放したことが語られていく。浅野忠信が扮する通詞(通訳)を介して、井上とロドリゴとの間でシンプルかつ深遠な宗教問答が交わされる。壮絶な殉教を遂げるモキチ役の塚本晋也(オーディション会場に現われ、スコセッシ監督を驚かせた)を含め、日本人キャストの好演が光る。
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