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日刊サイゾー トップ > その他  > 国産劇場アニメ大躍進の2016年を振り返る
【おたぽる】

制作技術の進歩、ファンの意識の向上と宣伝におけるSNSの存在感……『君の名は。』『聲の形』『この世界の片隅に』国産劇場アニメ大躍進の2016年を振り返る

1612_eigamatome01.jpg映画『この世界の片隅に』公式サイトより

 そんな追い風の中、11月12日に片渕須直監督の『この世界の片隅に』が公開され、大ヒット中。当初63スクリーンだった公開劇場は現在も拡大され続けており、興収10億円突破も時間の問題と言われている。

『この世界の片隅に』は戦時下の広島・呉を舞台に、あの悪しき戦争の中にも庶民の日常生活が確実にあったことを、徹底的なリサーチで描出しながら見る側の意識を当時の世界へ巧みに誘う秀作だが、本作の場合クラウドファンディングで製作費を集め、その出資者3000人以上がSNSなどを利用して積極的に作品の良さをPR。

 また、なぜか作品の存在を無視するテレビ局や新聞社などが続出し(主人公の声にのんを起用したことで、彼女が元所属していた芸能事務所がマスコミに圧力をかけたという説があるが、本当か?)、それに憤った一般ファンも義侠心を露にSNSに応援の書き込みなどを拡散させていったことも、結果的としては作品の評判を広めることに繫がった。

 雑誌や新聞、テレビといった従来のメディアにおける宣伝展開ではなく、SNSによる観客側の自主的かつ積極的な応援、いわゆる口コミによってヒットに結びつく。こうした傾向は今後も促進されていくことであろう。その意味でも『この世界の片隅に』は、映画宣伝のSNS元年を象徴するものとして屹立しているとも思う。

 この10年のアニメーション映画の質的進歩と、それらを見続けてきたアニメ・ファンの成長と意識の向上、そしてSNSの日常生活への浸透など、さまざまな要素が合わさり、ついに国産アニメーション映画は国産実写映画のみならず、ハリウッド映画をも質的にも興行的にも凌駕した。16年とはそんな記念すべき年である(一方で2016クライシスといった、制作現場の過酷な労働環境などが改めてクローズアップされた年でもあったが、またそれは別の話として……)。

 その引き金を引いたのは、やはり『君の名は。』だろう。

『君の名は。』を初めて試写で見たとき、これは日本映画&アニメ映画界に革命が起きると確信したものだったが、それがこちらの予想を大幅に上回る結果となり、実は少々戸惑っているほどではあるのだが、やはりこの勢い、ぜひとも17年にも繋げていただきたい。

 この10年、アニメーション映画を見終えての昂揚をあからさまにする若い観客たちをずっと見続けてきたが、それが一般のシネコンにまで普及するようになる日がくるとは思いもよらなかった。

 アニメーション映画をめぐる環境は、これからも確実に変わり続けていく。今はそれがプラスの方向にこそ進んでいくことを祈ってやまない気分である。
(文・増當竜也)

最終更新:2017/01/01 07:15
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