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日刊サイゾー トップ > その他  > 国産劇場アニメ大躍進の2016年を振り返る
【おたぽる】

制作技術の進歩、ファンの意識の向上と宣伝におけるSNSの存在感……『君の名は。』『聲の形』『この世界の片隅に』国産劇場アニメ大躍進の2016年を振り返る

 一方でスタジオジブリが14年に制作部門を休止したことで、それに代わるヒットメーカーを、映画会社も映画ファンも欲していた(ちなみにジブリが海外で制作し、9月17日に公開された『レッドタートル ある島の物語』は、質的評価の高さに関わらず興行的には大惨敗に終わった)。

 その中から細田守らが注目を集めていくわけだが、彼らのほとんどはアニメ制作スタジオ出身で、いわば宮崎駿らのラインを純粋に受け継ぐ存在であるのに対し、新海誠は02年の短編自主制作作品『ほしのこえ』で脚光を浴び、そこから業界の注目を集め、当然ながら他者とは出自が異なるインディペンデント出身であり(もっとも『ほしのこえ』の以降はずっとスタジオでのアニメ制作に勤しんでいるが)、パソコンでのアニメ制作が容易になった21世紀のアニメ・クリエイターを象徴する存在であった。

 新海誠はその後『秒速5センチメートル』(07)や『言の葉の庭』(13)といった単館公開作品がクリーンヒットとなり、新たなファン層を獲得している。それは思春期の少年少女たちの繊細な心情に常に真摯に向き合いつつ、決して媚びることなく自身の個性を貫き続けていった賜物でもあった。

1612_eigamatome02.jpg映画『君の名は。』公式サイトより

 その波に乗っての『君の名は。』である。東宝という国内トップの映画会社の英断による配給・公開は、それまで新海作品を知らなかったライト層にも、思春期の切ない揺れを訴求し得た作品として大いに認知され、また東日本大震災など非常に不安定な世相の中でのそれぞれの立ち位置を認識させる効果までもたらしたようである。

「あんなに当たる要素ばかり詰めこんでいれば、そりゃヒットもするさ」などとやっかみのコメントを出す輩もいたが、それらに対して新海誠は「なら、あなたが作ってみればいい」と穏やかに返した。実際、新海映画は『ほしのこえ』から『君の名は。』まで何も変わっていない。ただ、公開形態が拡大されたことで、もともと皆に愛される作品要素が大きく伝達されていっただけのことである。

1612_eigamatome04.jpg映画『聲の形』公式サイトより

 閑話休題。『君の名は。』の大ヒットは、国産アニメ映画のクオリティの高さをライトな映画ファンにも広く知らしめることになり、その勢いの中、山田尚子監督の『聲の形』が9月17日に全国120館で公開された。聾唖を題材にした異色作ながら、その中からイジメなど現代における思春期の少年少女たちの切迫した問題に踏み込み、それぞれの繊細な揺れを巧みに描いた秀作として、こちらも高く評価されるとともに。現在興収22億円を突破。ますます国産アニメーション映画に注目が集まっていく。

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