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日本映画に豊かさをもたらしたものは一体何か? 『この世界の片隅に』ほか2016年の話題作を回顧

日本映画に豊かさをもたらしたものは一体何か? 『この世界の片隅に』ほか2016年の話題作を回顧奥田庸介監督が主演も兼ねた『クズとブスとゲス』。奥田監督は撮影中にビール瓶を頭でカチ割ってみせるクレイジーぶりを発揮。

『君の名は。』をメガヒットに導いた東宝の川村元気プロデューサーが手掛けた『怒り』も“いま”という時代の空気感を濃厚に感じさせた。吉田修一の同名小説を渡辺謙、妻夫木聡、広瀬すずといったオールスターキャストで映画化したものだが、作品で描かれる“怒り”は単に凶悪犯に向けられたものではなく、怒りという感情を爆発させることができない人々の内面にフォーカスを絞ってみせた。沖縄の基地問題、性的マイノリティーに対する偏見など、誰に対して怒りをぶつければいいのか分からない現代人のやるせなさを代弁した作品だった。ひとつの作品で実質3本分の映画を撮影した李相日監督のタフさも特筆したい。

 この5年間は“クラウドファンディング”が日本でも浸透しはじめた期間でもあった。ネットで一般ユーザー向けに少額の製作資金を募るクラウドファンディングは、映画界ではこれまで低予算のドキュメンタリー作品などで効力を発揮してきたが、『この世界の片隅に』はクラウドファンディングで3921万円を集め、5分間のパイロットフィルムを製作。パイロットフィルムの出来のよさから出資企業が現われ、2億5000万円の製作費を調達することに成功した。奥田庸介監督の『クズとブスとゲス』、井口昇監督の『キネマ純情』もクラウドファンディングで資金を募り、製作に踏み出すことが可能となった。地方都市の惨状をリアルに描いた『サウダーヂ』(11)の富田克也監督の新作『バンコクナイツ』(2017年2月公開)もクラウドファンディングで1000万円を集め、タイでのオールロケを敢行してハイクオリティーの作品に仕上げている。SNSを介して、気骨ある映画監督のオリジナル度の高い企画をファンひとりひとりが後押しするという流れが、徐々にだが形になりつつある。園子温監督が福島でロケ撮影し、地元の人々をキャスティングした『ひそひそ星』は自主制作という形態だったが、大手の映画会社に頼ることなく製作・配給に取り組んでみせた。メジャーとインディーの壁にとらわれない監督たちの自由な活躍がますます広がることを期待したい。
(文=長野辰次)

日本映画に豊かさをもたらしたものは一体何か? 『この世界の片隅に』ほか2016年の話題作を回顧

『この世界の片隅に』
原作/こうの史代 監督・脚本/片渕須直 音楽/コトリンゴ 
出演/のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、藩めぐみ、岩井七世、牛山茂、新谷真弓、澁谷天外
配給/東京テアトル テアトル新宿ほか全国順次公開中
(c)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
http://konosekai.jp

『太陽の蓋』
監督/佐藤太 脚本/長谷川隆 音楽/ミッキー吉野
出演/北村有起哉、袴田吉彦、中村ゆり、郭智博、大西信満、神尾佑、青山草太、菅原大吉、三田村邦彦、菅田俊、井之上隆志、宮地雅子、葉葉葉、阿南健治、伊吹剛 配給/太秦
(c)「太陽の蓋」プロジェクト/Tachibana Tamiyoshi
http://taiyounofuta.com

『クズとブスとゲス』
監督・脚本/奥田庸介 出演/奥田庸介、板橋駿谷、岩田恵里、大西能彰、カトウシンスケ、芦川誠 配給/アムモ98 
(c)2015映画蛮族
http://kuzutobusutoges.com

最終更新:2016/12/29 18:00
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