イチローやダルビッシュの“本音”を引き出す、元日ハム・稲葉篤紀のインタビュー力
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Twitterやブログで自ら言葉を発信し、イチロー同様、普段はあまりメディア取材を受けないダルビッシュからこの回答を引き出したという点で、稲葉の功績は間違いなく大きい。
イチロー、ダルビッシュ以外でも、日本ハムの大谷、栗山英樹監督、中田翔、横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智といった、今季の球界を支えた人物たちを継続して追いかけていた稲葉。興味深かったのは、ソフトバンクと日本ハムが直接対決した今季のパ・リーグ天王山(9月21日)の試合直前、栗山監督にインタビューした際、「2点先に獲って、大谷で逃げ切りたい」というコメントを引き出したこと。果たして試合はその言葉通り、日本ハムがホームランで2点を先制し、大谷が見事に完投勝利。この試合で、ほぼ今季のパ・リーグの雌雄が決した、といわれる試合だっただけに、実に意義のあるインタビューとなった。
普段、メディアの取材を受けないことで知られるイチローやダルビッシュが稲葉の前では胸襟を開くのは、稲葉がどこまでも謙虚であることが大きな要因だろう。
《人気にあぐらをかいてはいけない。クールになってもいけない。謙虚な気持ちを抱きつつ、初心を忘れることなく、つねに挑戦者のつもりで熱く闘わなければいけない。僕たちこそ、マンネリズムに陥ってはいけないのです》
これは、引退した際に上梓した自著『THANKS FANS! 北海道に僕が残したいもの』(宝島社)に収められた一節。日本ハムが今後も強く、人気を保つために必要な心構えについて書いたものだが、これはそのまま、情報を伝える側に回った稲葉自身のモットーのように思えてならない。
そんな稲葉は以前、イチローにインタビュアーの心構えを聞かれて、こう答えている。
「選手の立場がすごくわかるから、もうしわけない。これ聞いて大丈夫かなと。視聴者は『コレを聞いて欲しいんだろうな』というのもわかるけど……まだまだ」
プロフェッショナルとしては変わらなきゃいけないと思う、と語る稲葉だったが、むしろ変わる必要はない。選手たちから慕われ、視聴者にも好印象を与えられるインタビュアーは、それだけで稀有な存在だ。2017年も魅力的な言葉を選手たちから引き出し、野球報道に一石を投じてほしい。
(文=オグマナオト)
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