社畜は死ね、狼は生きろ! 本物の狼との交歓シーンもある衝撃作『ワイルド わたしの中の獣』
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もし男性監督が本作を撮っていたなら、森で狼を捕獲するシーンに重点が置かれ、人間が野生のシンボルである狼をどう服従させるかが作品の主題になっていただろう。クレビッツ監督はむしろ狼と一緒に暮らすことで、野生に触れた主人公がどう変わっていくかをカメラでじっくりと追っていく。
クレビッツ「主人公は自分の中の秘めた野生に目覚め、自由を求めるようになっていくわけですが、これはドイツの若い女性に限ったことではないはず。世界中の資本主義経済の国すべてに当てはまることだと思います。祖父や父の世代は私たちのためにこの世界を築いてくれたわけだけれども、今の私たちの肌には合わない部分がいろいろと生じてきている。多くの人間が共存してくためには仕方ないこともあるけれど、人間には自分でも予測できないような知らない一面があり、闇も抱えているものです。でも、今の社会にはそれを許容できるほどのキャパがないように私は感じるんです。周囲の期待に応えることを止め、自分がやりたいと思っていることにだけ集中すれば、人間はもっと自由になれるし、どんな道でも進めるんじゃないかしら」
狼は生きろ、豚は死ね。実在の金融詐欺事件を題材にした角川映画『白昼の死角』(79)のCMで使われた有名なフレーズだ。『白昼の死角』で主人公を演じた夏八木勲は法に縛られることなく、図太く豪快に生きてみせた。本作の主人公・アニアも社会のルールや常識に左右されることなく、内なる野生を解き放ってワイルドに生きる道を選ぶ。社畜は死ね、狼は生きろ。そんな言葉が本作にはよく似合う。
(文=長野辰次)
『ワイルド わたしの中の獣』
監督・脚本/ニコレッテ・クレビッツ 音楽/テラ・ノヴァ、ジェイムス・ブレイク
出演/リリト・シュタンゲンベルク、ゲオルク・フリードリヒ、ザスキア・ローゼンタール、ジルク・ボーデンベンダー
配給/ファインフィルムズ R15+ 12月24日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
(C)2014 Heimatfilm GmbH + Co KG
http://www.finefilms.co.jp/wild
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