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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.406

社畜は死ね、狼は生きろ! 本物の狼との交歓シーンもある衝撃作『ワイルド わたしの中の獣』

finefilmswild02狼との共演を果たしたリリト・シュタンゲンベルクはドイツ期待の若手女優。ニコレッテ・クレビッツ監督の若い頃に似ている。

 本作を撮り上げたニコレッテ・クレビッツ監督は、自由を求める女囚たちの脱獄青春ムービー『バンディッツ』(99)などに出演した人気女優であり、現在は脚本家、映画監督、ミュージシャンなど多彩な才能を発揮しているクリエイター。今回のぶっとんだ企画はどのようにして生まれたのか、スカイプインタビューで答えてくれた。

クレビッツ「同じ夢を何度も見たんです。何かにずっと後ろを付けられているという夢でした。あまりにも何度も続くので、怖かったけれど思い切って後ろを振り返ってみると、そこにいたのは一匹の狼でした。ドイツでは狼は100年前に絶滅したと言われていたんですが、ポーランドから国境を越えて狼たちがドイツに移動しているというニュースを耳にしたことも、そんな夢を見た要因だったと思います。狼はどんな環境にも適応するなど人間に近い一面を持っている一方、野生動物として生きる習性を棄てることなく種を保ってきた。狼のそんなところに私は憧れているんです。人間は安定した生活を求めながらも、どこか危険なもの、自分とは異なるものに魅了される生き物ではないでしょうか。そんな私の想いが、ひとつの作品になったものが本作なんです」

 本物の狼を使って、どうやって撮影したのか。種を明かせば、ハンガリーにはウルフトレーナーという職種が存在し、主演女優のリリトはクランクインの3週間前からハンガリーで過ごし、狼と接する上での基本的なことを身に付けたとのこと。それでも撮影期間28日間のうちの15日間を占めた狼との共演シーンは、クレビッツ監督も出演者たちも一瞬も気を緩めることが許されない緊張感のある撮影が続いた。

クレビッツ「撮影に使う狼は適度にお腹をすかせ、でも飢え過ぎた状態にしないようにしておくことが重要でした。リリトはとても勇気のある女優です。リリトの股間に狼が顔を突っ込むシーンがありますが、あのシーンはリリトの股間にフォアグラを用意しておいたんです(笑)。基本、狼は食べ物に釣られるんです。部屋の中をリリトの後を狼が付いて歩くシーンは、リリトのポケットの中に生肉を仕込んでおきました。生まれたときからトレーナーによってしっかり躾られた狼たちでしたが、ちょっとでも人間が油断すると、狼は見逃しません。狼に対して、怖がったり弱気を見せないようにしました。トレーナーが檻の扉を普段より1秒長く開けていただけでも、狼はその隙を突いて逃げ出し、戻ってこようとはしません。犬と違って、狼は人間を喜ばせようとは決して思わない動物なんです」

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