子ども時代と地続きの関係の中で生きる楽しさと面倒くささ──「お笑い・プロレス・ドリームハイツ」三題噺でたどるサイプレス上野の足跡
#本 #インタビュー
――よくも悪くも今は整備されたんでしょうね。
上野 自分にとって、客のやばさも大事な要素だったんですよ。会場で社会不適合者と出会って、食らうじゃないですか。ずっと寝ているヤツがいたかと思えば、コーラの1.5リットルを何本も持ち込んでゴクゴク飲みながら実況してるやつがいて、それ観てるの好きだったな~(笑)。それも相手を見下すわけじゃなく、冬でも短パン、さらに金髪の俺を見て向こうも同じこと思ってただろうし。人生いろいろで、いろいろな楽しみ方があることを学べたのは、でかかったです。
それに比べると今、プロレスを見ていてもどこか冷静で、自分が熱狂してるか分からないんですよね。じゃあなんで行ってるのかといえば、自分を保つため会場に行ってるのかもしれない。リリック書くのが溜まってて煮詰まってるとき、家から遠い後楽園ホールにわざわざ出向くと、救われるというか。こないだも大日に行ったら、見られたのがセミのフォールからだったんですよ。でもメインマッチの内容がよかったんで、これでいいかなと納得して。
――今は勝った負けたで一喜一憂はしていない?
上野 ないんですよ。そこは寂しいですね。テーマがある試合は気持ちが入るんですよ。でもそれも09年の葛西VS伊東(FREEDOMS・葛西純VS大日本・伊東竜二のデスマッチ対決。同年のプロレス大賞ベストバウトを受賞。参照)あたりで記憶が止まっている。あれもプロレス雑誌に載ってたバルコニーダイブの写真に俺が映ってるから、「これはやばいことが起こるぞ!」と自分の席外して向かってたんでしょうね。
――サ上さんはやばい現場にいたい人なんですね。今、ほかに注目してる現場はありますか?
上野 ヒップホップもやばいヤツが現場にいなくなりましたからねえ。アイドル現場は取材でいくと、ファンが結構ちゃんとしていて健全だなと思う。今やばい空気が残ってるのは女子プロレスなのかなー。スカスカの後楽園で、リングサイドでずっと「うおー」とデス声出してるヤツは衝撃でした。人目もはばからず、ずっとカメラでバシャバシャ撮ってるヤツもいるじゃないですか。でも俺たちは自意識が強くてそれができなかった。『東京ポッド許可局』でいう「自意識が邪魔をする」ですね(笑)。だいぶ落ち込んで帰りましたねえ……。いつまでも女子レスラーのポートレートを買える人間でいたいですよ!(笑)
(構成=鈴木工/写真=市村岬)
■サイプレス上野
ヒップホップ・ユニット「サイプレス上野とロベルト吉野」のMC。横浜市戸塚区ドリームハイツ出身。最近では『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)のモンスターとして知られるように。無類のプロレスファンでもあり、来年1月4日開催の「WRESTLE KINGDOME 11 in 東京ドーム」(通称イッテンヨン)のオフィシャルテーマソング「GET READY」を制作。MVがYouTubeで公開中<https://www.youtube.com/watch?v=JA6I_29dmWc>
Twitter ID<@resort_lover>
■書籍情報
『ジャポニカヒップホップ練習帳』
今や地上波番組はもとよりテレビCMにも出演し、一般知名度も急上昇中のサイプレス上野の半生記。自分にとっての「ヒップホップとは何か?」がぎゅう詰めされた一冊。
著:サイプレス上野 発行:双葉社 価格:1400円(税別)
http://amzn.asia/iLZWZwY
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