ロボトミー手術、地雷撤去の強制……世界残酷史『ニーゼと光のアトリエ』『ヒトラーの忘れもの』
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デンマークとドイツの合作映画『ヒトラーの忘れもの』も知られざる歴史の暗部を暴いた作品だ。第二次世界大戦中、ドイツによって占領されていたデンマークには連合軍の上陸を防ぐために200万個もの地雷が海岸線に埋められていた。ドイツの全面降伏によってデンマークは5年ぶりに解放されたが、海岸線の地雷はそのままの状態。この地雷群の撤去を命じられたのは、デンマークに取り残されていたドイツの捕虜兵たちで、その大半は15歳から18歳までの少年兵だった。ナチスドイツが残した負の財産を処理するなかで、少年兵たちは手足を、そして命を次々と落としていくことになる。
デンマーク軍のカール軍曹(ローラン・ムラ)が監視する中、双子のレスナー兄弟(エーミール&オスカー・ベルトン)ら11名のドイツ少年兵たちが砂浜に埋まった地雷群の撤去に従事する。あどけない顔の少年兵たちは「母国が犯した戦争犯罪を自分たちが償なわなくては」と地雷撤去の経験もないまま、手探りでの作業に当たる。カール軍曹から「地雷撤去さえ済めば、帰国できる」と言われた少年兵たちだったが、彼らが置かれている状況は最悪だった。デンマーク兵だけでなく民間人もドイツ兵のことを憎み、食料をろくに与えない。1日の作業が終わると逃げ出さないように、狭い粗末な小屋の中に鍵を掛けて閉じ込める。お腹をすかせ、体調を崩しても休ませてもらえず、少年兵たちはひとり、またひとりと地雷を誤って爆発させてしまう。ドイツ人を憎んでいたカール軍曹だが、少年兵たちのあまりに悲惨な状況を見かねて、こっそり食べ物を調達する。だが、このことからカール軍曹はデンマーク軍の上官に睨まれ、少年兵たちはより苛酷な運命に追い込まれてしまう。
『ヒトラーの忘れもの』を手掛けたのは、戦後日本の裏社会を描いたジャレット・レト主演のヤクザ映画『The Outsider』を撮影中のデンマーク出身のマーチン・サントフリート監督。「戦争において自分たちがいかに正しかったか、どれほど人々の助けになったかという話はよく聞くけれど、どの国の歴史にも暗黒面はある。地雷を埋めたのはドイツ人であり、ドイツ人が撤去すべきだとは思うが、だからといって地雷撤去の経験のない少年たちにやらせるべきだったのかは大きな疑問だ。この出来事に関する歴史資料はほとんどなく、墓地や病院を訪ね、また民間の歴史研究家たちから話を聞いて回った。70年前の戦争の物語だが、人間は戦時中と戦後でどんな態度をとるのか、また怪物を倒すために自分も怪物になってしまうことに警鐘を鳴らしたものなんだ」と語っている。
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