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5円の値上げで大乱闘! “世界で一番ビートルズを憎んでいる男”と東京オリンピックと学生運動と──『60年代ポップ少年』

 その後、浪人生となった亀和田は、例に漏れず学生運動に身を投じる。亀和田にとって、学生運動もワクワクするポップ文化のひとつだったからだ。

 そんなある日、 亀和田は通っていた代々木ゼミナールの玄関横のそば屋が5円の値上がりをすることを知る。「いい根性だ」「客が減るだろう」と悪口の言い合いが次第に盛り上がり、敵対する民青(日本民主青年同盟)が値上げ反対ビラを校内で配ると知るや、状況は一変。「民青の好きにはさせておけない」と、亀和田らも値上げ反対ビラを配り始める。
 
 かくして、代ゼミ前は一触即発の事態に。民青と亀和田らのにらみ合いが続き「暴力学生は帰れ!」「ハネ上がりのトロツキスト!」と、もはや値上げが原因とは思えない罵声が飛び交い、ついには大教室での直接対決にまで発展する。

 たった5円の値上げで、この騒動である。亀和田自身も、「9割の軽薄と1割の倫理感」と語るように、何かに情熱をぶつけたいというパワーが先行したのだろう。ただ、ぶつける先が、「予備校の横のそば代の値上げ」だったというのが、なんともバカバカしく微笑ましい。

 その他にも、脱走した米兵をかくまったり、郵便局を襲撃したりと、普通の人には経験できないエピソードが満載だ。東京オリンピックの喧騒のその陰で“もうひとつの60年代”がそこにはあった。
(文=是家リアル)

最終更新:2016/12/08 22:30
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