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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.403

迷宮入りした怪事件をメソッド演技で解明する!? 芸能界の闇と舞台がリンクする『貌斬り KAOKIRI』

kaokiri_03.jpg演出家を演じるのはアクの強い作品に欠かせない木下ほうか。舞台役者たちに「その気になったら、本当に斬りつけてしまえ」と耳打ちする。

 衣装やメイクによって外見を変えるだけでなく、内面まで他人になってしまう。芸能の民=俳優という職業の特異性がクローズアップされる『貌斬り』。本作の映画監督たちはメソッド演技を用いた“安楽椅子探偵”となるわけだが、マーロン・ブランドやジェームズ・ディーンといったメソッド演技の達人は名探偵にもなりえただろうか?

細野「なるほど……。あの2人なら、なりえたかもしれません。ジェームズ・ディーンは出演作が少なく、資質でやっていたかもしれませんが、マーロン・ブランドはいろんな役をやっているから、なりきるタイプの人な気がする。ダニエル・デイ=ルイスも、なりきるタイプでしょう。役所広司さんもそう。役に入ると、『えっ、彼は役所さん?』となってしまう。予定調和の中だけで芝居をしない人です。役へののめり方が凄かったのは、『竜二Forever』の高橋克典くん。減量から始まり、『竜二』のシーンを再現し、私生活の金子正次も演じなくてはいけなかった。まったく自分と資質の異なる金子正次役に果敢に挑んでみせた。『竜二』の金子正次さんにもそれは言える。世間では金子正次=竜二と語られているけれど、『竜二Forever』の脚本を作るときに金子さんの実家を訪れ、部屋に入ると18歳の写真があり、とてもいい笑顔で写っていた。それを見たとき、金子さんは竜二じゃない、努力して竜二をつかんだなと思ったわけです。そういう点で、今回の『貌斬り』は『竜二Forever』と繋がっていると言えますね」

 演技というフィクションの世界を通して、現実世界の暗部にスポットライトを当てる。そこに浮かび上がるのは、非近代的な土壌の芸能の世界からビジネスとしてすべて割り切られる現代社会へと一本の細いロープを綱渡りするひとりのスター俳優の姿だ。背景となる闇が深ければ深いほど、ロープ上のスターは輝きを増していく。非近代から現代へ、フィクションからリアルへ。『貌斬り』で斬り裂かれた顔の傷口から、意外な真実が見え隠れしている。
(文=長野辰次)

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『貌斬り KAOKIRI ~戯曲「スタニスラフスキー探偵団」より~』
プロデューサー・脚本・監督/細野辰興
出演/草野康太、山田キヌヲ、和田光沙、金子鈴幸、向山智成、森谷勇太、森山千有、南久松真奈、日里麻美、嶋崎靖、佐藤みゆき、畑中葉子、木下ほうか 
配給/マコトヤ 12月3日(土)より新宿K’s cinema、12月10日(土)より名古屋シネマスコーレ、17年1月14日(土)より福岡・中洲大洋劇場にて公開
(C)2015 Tatsuoki Hosono/Keiko Kusakabe/Tadahito Sugiyama/Office Keel
http://kaokiri.makotoyacoltd.jp

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