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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.402

映画監督の願望と性癖が露呈する新作ロマンポルノ『ジムノペディに乱れる』&『風に濡れた女』

kazeninureta_01こちらは塩田明彦監督の『風に濡れた女』。神代辰巳監督の『恋人たちは濡れた』(73)のオマージュシーンから始まる。

 第2弾となる塩田明彦監督の『風に濡れた女』も、塩田監督自身の心情が投影された作品となっている。高校生男女のSM関係を描いた『月光の囁き』(99)で鮮烈なデビューを飾り、『どこまでもいこう』(99)や『害虫』(02)などの珠玉作を放った塩田監督だが、『カナリア』(05)以降はなかなかオリジナルの劇場映画を撮ることができずにいる。そんな監督自身の溜め込んでいた澱を吹き飛ばすかのように、『風に濡れた女』のヒロイン・間宮夕貴は本能の赴くまま、おっぱい剥き出しで暴れ回る。塩田監督作品のヒロインたちは『月光の囁き』のつぐみ、『どこまでもいこう』の芳賀優里亜、『害虫』の宮崎あおい……、みんな頭で考えるよりも先に体が動き出し、感情がそれを追いかけていく。『風に濡れた女』は塩田監督の原点回帰を感じさせる清々しさがある。

 オーディションで選ばれた間宮夕貴は、石井隆監督の『甘い鞭』(13)で壇蜜の少女時代に扮して注目を集めた若手女優。『甘い鞭』は監禁陵辱される超ハードな役だったが、『風に濡れた女』では正体不明な野性味たっぷりのヤリマン女・汐里を実に楽しげに演じている。山奥で人知れず隠遁生活を送る元劇作家の柏木(永岡佑)を相手に、組んず解れつの肉弾戦を全編にわたって繰り広げる。濡れ場というよりも、男と女のどちらが恋愛&セックスの主導権を握るかの格闘技戦だ。本能の赴くままに責めてくる汐里に、理詰めで考える柏木は防戦一方で常にマウントポジションを取られてしまう。塩田監督作品は『ギプス』(01)の佐伯日菜子、『黄泉がえり』(03)、『どろろ』(07)の柴咲コウとS系の顔立ちのヒロインが多いことにもふと気づく。女優たちがフルヌードを披露するのと同じように、それを撮る監督自身の性癖や願望も官能映画には如実に現われる。間宮夕貴のワイルドさは塩田監督だけでなく、海外の女性たちの目も釘付けにし、20代の女性審査員が半数以上を占めたロカルノ国際映画祭の若手審査員賞に『風に濡れた女』は選ばれている。

 新世紀のロマンポルノに参加した5人の監督たちに対し、日活側が出した条件は「撮影期間は1週間」「10分に一度の濡れ場」という往年のロマンポルノとほぼ同じものだった。メジャー大作を経験している5人の監督たちにとっては難儀なはずだったが、レイティングを気にせずにオリジナルの新作を自由に撮ることができるこの企画は楽しくて仕方なかったようだ。官能映画というジャンルの中で、実力派監督たちがオリジナル色を競い合ったロマンポルノ・リブート・プロジェクト。年明けに待機している白石和彌監督の『牝猫たち』(1月14日公開)、園子温監督の『アンチポルノ』(1月28日公開)、中田秀夫監督の『ホワイトリリー』(2月11日公開)は後日あらためて紹介したい。
(文=長野辰次)

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『ジムノペディに乱れる』
監督/行定勲 脚本/行定勲、堀泉杏 音楽/めいなCo.
出演/板尾創路、芦那すみれ、岡村いずみ、田山由起、田嶋真弓、木嶋のりこ、西野翔、岩谷健司、宮本裕子、三浦誠己、伊藤洋三郎、風祭ゆき 
配給/日活 R18+ 11月26日(土)より新宿武蔵野館、横浜シネマ・ジャック&ベティほか全国順次公開
(c)2016日活
http://www.nikkatsu-romanporno.com/reboot

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『風に濡れた女』
監督・脚本/塩田明彦 音楽/きだしゅんすけ 
出演/間宮夕貴、永岡佑、テイ龍進、鈴木美智子、中谷仁美、加藤貴宏 
配給/日活 R18+ 12月17日(土)より新宿武蔵野館、横浜シネマ・ジャック&ベティほか全国順次公開
(c)2016日活
http://www.nikkatsu-romanporno.com/reboot

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