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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > マッスル坂井×松江哲明特別対談
『俺たち文化系プロレスDDT』公開記念・マッスル坂井×松江哲明対談

「この年で愚直に生きるのはマジでツラい!」……けど、俺たちが文化系にこだわる理由

DDT_sub1.jpg(c)2016 DDTプロレスリング

――今回の映画で“主役”となっているのはみんな同世代ですが、そこに特別な意識はありますか?

坂井 ありますね。今、お客さんがプロレスやプロレスラーに求めるものって、変わりつつある。2000年代当時は、プロレスに対抗する概念として、総合格闘技とかアメリカのWWEがあったから、「プロレスはこんなことができるよ」って表現のひとつがDDTだったりマッスルだったんです。けど、今は総合格闘技などが当時ほど影響力を持っていない中で、若い人たちにとって、プロレスは真剣勝負だという前提で見るスポーツになってしまっている。だから、僕たちがやっている「文化系プロレス」というアプローチは、今のプロレスファンには必要とされない時代になってきているという自覚はあります。そんな中で、DDTのエースであるHARASHIMAさんは純粋に強さを競う「体育会系プロレス」にもちろん対応して、DDTを引っ張る存在として、「キング・オブ・スポーツ」を社是としている新日本プロレスのエース・棚橋選手と同じ土俵で勝負を挑んだんです。そこから起こった齟齬とか、価値観の違いとかは、HARASHIMAさん個人に対してではなくて、DDT全体へのメッセージだと思ったから、自分らとしても何らかの答えは出さなきゃならないなって。だから僕は、映画っていうジャンルでプロレスの面白さを表現したんです。

松江 僕はこれまで自分の映画って若い人たちに見てもらいたかったんですが、今回の映画は同世代に見てもらいたい。

坂井 ホント、そう!

松江 意外とこういう「文化系」の表現をアラフォーまで続けている人っていないんだってわかってきたんですよ。みんなやめちゃう。自主映画をやってた人も、もうそういうんじゃないよねって。僕と一緒に自主映画やってた仲間も、漫画原作の映画の監督とか、名前が重視されないディレクターをやるわけですよ。愚直にサブカルを続ける人は、本当にいなくなった。「文化系」をアラフォーになっても続けるって、ホントに他人事でなく、体を壊すし、お金にならないし、マジでツラいし、キツイんですよ。

坂井 確かに、いま愚直にものづくりをしようとしても、情報も入ってくる。ちゃんと考えればエラーが起きにくいし、能力さえあれば、いい会社に入れたりする。結局、ホントにすげーヤツって朝井リョウみたいになりますからね。

松江 そう、そう、そう!

坂井 東宝に入れちゃうんですよ! われわれの世代なんて募集してないですからね、きっと(笑)。

松江 いや、ホントにそういう話で、僕らの映画が好きな若い人は今、東宝とかに入ってるんですよ。ちゃんと金を稼いだ上で、生活は生活、好きなものは好きなものってやっている。僕らのお手本は、お金よりも大切なものがあるはずだっていう、例えばいましろたかしさんとかだったんですよ。僕らは、あれが正しいって思ってたんです。でも実はね……、あれ、正しくなかったんです(笑)。

坂井 ええっ!? でも、たとえあきらめたとしても、意外と夢がかなってしまうことはあるし、最近、それを感じさせてくれるような素晴らしい出来事もたくさんありました。同世代の人で、何かの形でやめたり、まだ続けている人も少なからずいるわけで、そういう人にはどうしても見てほしいし、共有したいし、一緒に戦っていきたいなって思いますね。でも、愚直にものづくりしようとしている人が東宝に入れる、いい時代なんですよ、実は。

松江 俺、入れたかな…?

坂井 入れないよ! 専門学校卒だから!(笑)

松江 そうだった、そうだった(笑)。
(構成=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/

※このインタビューのロングバージョンは、近日、てれびのスキマのブログで公開予定です。

DDT_main.jpg

●『俺たち文化系プロレスDDT』
監督:マッスル坂井、松江哲明 音楽:ジム・オルーク 出演:マッスル坂井、大家健、HARASHIMA、男色ディーノ、高木三四郎、鶴見亜門、KUDO、伊橋剛太、今成夢人、棚橋弘至、小松洋平
配給:ライブ・ビューイング・ジャパン
11月26日(土)から新宿バルト9ほか全国公開
公式サイトURL http://liveviewing.jp/obpw2016/
予告URL https://www.youtube.com/watch?v=WJCyqA3ggIQ&feature=youtu.be

最終更新:2016/11/24 10:31
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