「この年で愚直に生きるのはマジでツラい!」……けど、俺たちが文化系にこだわる理由
#映画 #インタビュー #プロレス #松江哲明 #てれびのスキマ
松江 この前、『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)で「アイスリボン」が取り上げられたドキュメンタリーを見ましたけど、「こういう視点になっちゃうかー」と思いました。
坂井 いつまでプロレスは、世間にだまされ続けるんだって! 世の中に仕掛ける側であってほしいのに、なに仕掛けられてるんだよって。
松江 「プロレスラーって、こうなんですよ」ってノリで語っちゃうと、魅力が消えるんですよ。プロレスラーは常識人じゃないんだから。『ザ・ノンフィクション』である以上、日曜昼に見ている人に向けた「わかりやすさ」は絶対に崩せないんですよ。そこを崩せない以上、プロレスを撮るのは難しいと思いました。みんなが知っている1センチ、2センチ、3センチ……っていう物差しを持ってきちゃいけないんですよ。僕がマッスルとかDDTに教わったのは、俺たちの物差しは違うんだってことなんですよ。自分たちの物差しじゃなきゃ描けない世界があるんだよ、っていうのをやってるんですよ。プロレスって、そういうものなんですよ。
坂井 親がプロレスやるのを反対していようがしてなかろうが関係ないんだけど、絶対、親を連れてきたがりますね、テレビは(笑)。でも、関係ないから! お客さんが沸くか沸かないか、レスラー仲間がバックステージで「グッドマッチ!」って握手してくれるかどうか、トレーナーの先輩たちが「いい試合だった」って評価してくれてるかどうかだけなんです。勝ち負けを超えて、自分がレスラーとして表現したいことができたかどうか、それだけを考えてるから、親がどう思ったかなんてホンットどうでもよくて、親が止めたからってやるんですよ、プロレスラーは! バカなんですよ!
松江 「学校辞めます」なんて、当たり前じゃん!って。
坂井 実家の家業継ぐためにプロレスラー引退するやつなんて、いないですから!
――そうなんですか!(笑)
松江 でも、そこを取ると「わからない」ってなっちゃうんですよね。日曜昼に見る人は。
坂井 お父さん、お母さんは反対しないの? って当然思いますよね(笑)。まあ、しょうがないか。
松江 でも、そこを超えたものを撮っているはずなのに、排除しているなっていうのが、ドキュメンタリーを作っている身としては残念で。この映画は、そういうドキュメンタリーにはしないぞって。なるはずはないんですけど。大家さんは、『プロレスキャノンボール』上映のとき、パンフレットを買った人への特典として握手会してるのに、上映が終わった後、来場した人全員と握手しちゃう(笑)。ルールを超えちゃう人なんですよ。
坂井 そういうところって、確かに『ザ・ノンフィクション』では描けない。「マジでヤベえ」ってなっちゃうから。
一同 (爆笑)
松江 僕が感動したのはね、HARASHIMAさんがモヤモヤしてるときに引っ張るのが、やっぱり大家さんをはじめとする“文化系”のアラフォーの人たちで、僕は、大森での映像(※棚橋組との再戦日時が発表された大森駅東口前公園「UTANフェスタ2015」でのHARASHIMAと大家の挨拶)が好きなんですよ。
坂井 わかる!
松江 あのとき、HARASHIMAさんが大家さんに「ガンバレ、HARASHIMA!」って言われて、ちょっと戸惑ってるんですよね。あれがすごい大事なんですよ。ああいうときに立ち上がるのが、“文化系”の仲間。僕はそこにちょっとグッとくるんですよね。で、最後に「ガンバレ、オレ!」で締めるっていう図々しさ(笑)。そこもまた素晴らしいじゃないですか。あのシーンが、この作品での友情物語になっている。たぶん、普通のドキュメンタリー作る人が今のDDTを撮ると、飯伏(幸太)さんや竹下(幸之介)さんが主役だと思うんですよ。“輝く人”っていて、テレビだったらそっちなんですよ。でも、暗闇で見る映画だと、大家さんなんですよ。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事