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週刊誌スクープ大賞

死亡事故を起こす確率は64歳以下の3.75倍! 増え続ける「80歳ドライバー」の恐怖

 ニューズの今号はトランプについての大特集をやっているが、こちらはさずがに読み応えがある。そこにはトランプのアメリカの負の部分に対する危惧で埋め尽くされている。

 まずはメディアの間違いについて。メディアはトランプ阻止に執着するあまり、「フェアネス(公正さ)」を見失い、自らが見たい「現実」にとらわれ、別の現実を見落としてしまった。今でも「これほどアメリカ人がバカだったとは思わなかった」と言わんばかりの論調を続けているメディアがあるが、そんなエリート主義がアメリカの趨勢を見誤ったのだ。

 米軍駐留費の大幅な負担増については、30年あまりトランプの発言を調べてきた米ブルッキング研究所のトーマス・ライト研究員に言わせると、以前から懐疑的で、日本やドイツに負担増を拒否された場合は、「それを口実に一方的に防衛義務を果たさないこともあり得る」。日米安保条約破棄もトランプの信条としては、あってもおかしくないとニューズは言う。

 だが、アメリカの知識人たちの嘆きは深刻である。ニューヨーカー誌のデービッド・レムニック編集長はトランプの勝利は「移民排斥、権威主義、女性蔑視、人権差別を掲げる国内外の勢力の勝利だ。それはアメリカの共和制にとって悲劇にほかならない」と語っている。

 同誌のシニアライター・カート・アイケンワルドは、トランプがこれまで歩んできた道は、「他人の財産やキャリアをつぶして成功を手に入れ、それを自慢してきた。他人の手柄は奪い、自分の失敗の責任は他人に押し付ける。そうやってエゴを無限に膨らませてきた」。トランプは大統領になってもこれまで通り振る舞うだろうが、そうすれば共和党は空中分解し、アメリカも、と結んでいる。

 また、トランプが世界中で「TRUMP」名義使用権を売って稼いでいるトランプ・オーガニゼーションが、ビジネスと商売の利益相反を各国間で引き起こす可能性を指摘し、大統領になってからは、「彼の会社がすぐに閉鎖されるか、トランプ家から完全に切り離されるのでない限り、アメリカの外交政策は売りに出されたに等しい」と、トランプが大統領という肩書を利用して、国益よりもビジネスを優先するのではないかと手厳しい。

 言ったことを後で問われると、言っていないとシラを切り、口から出任せの暴言、放言を繰り返す「セールスマン」(「ニューズ」)に、世界は振り回されることになる。

 だが、彼は民主的に選ばれたのだ。敗戦後、ヒラリーが言ったように「この結果を受け入れ、彼にこの国をリードするチャンスを与えなければならない」。しばらくこの男の動向を見守り、冷静に対応することこそ、今の日本に一番必要なことである。

 最後に、熱狂的な若者の支持を得たB・サンダースが、「世界」12月号で語った言葉を添えておく。

「今日のアメリカの恐怖の一つは、悲しいことですが興味深いことに──白人の労働者階級、ことに女性の平均寿命が急激に下がっていることです。それは絶望と密接な関係があります。劣悪な仕事、無職、麻薬への傾倒、アルコールへの傾倒、自殺への傾倒。ですから、偏見に基づいた選挙運動で人びとの支持を得るトランプの能力もまた、人びとが経済的に傷ついた時、誰かを非難する必要があることと関係しています」

 トランプ誕生という意味を深く考えずに、もしかすると、ひょっとすると、日本にとって福になるかもしれないなどと、根拠のないあらまほしいだけの記事作りをすべきではない。トランプ個人はもちろんだが、こうした人間を支持し、大統領にまでしてしまったアメリカという国の病の重さを、今はじっくり考えるべきときである。

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