激しい会話劇『黒い十人の女』で見せる、天才・バカリズムのロジック
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「全員狂ってるよ」
そこに集まったのは10人の女たち。テレビプロデューサー・風松吉の9人の愛人と、ひとりの妻である。つまり風は“10股”しているゲス野郎なのだ。
集まった10人を前に、ひとりの愛人が口を開く。
「一緒に風を殺さない?」
もともと『黒い十人の女』は市川崑が監督し、船越英二が主演した昭和の名作映画である。これを、お笑い芸人・バカリズムが脚本を担当してリメイクしたのが、ドラマ版『黒い十人の女』(日本テレビ系)だ。
主人公・風松吉を演じるのは、映画版で演じた船越英二の息子・船越英一郎。これ以上ないキャスティングだ。なんでこんな中年のオッサンがモテるのかわからない。けど、なんかわかる、という絶妙なラインを演じている。
だが、リメイクといっても、主人公が10股をしていて、彼への殺害計画が持ち上がるという大まかな設定以外は、ほぼ完全オリジナル。もちろん、舞台は現代。バカリズムらしく、コメディが基調になっている。
“愛人歴”が最も長いのは、水野美紀演じる舞台女優・如野佳代。彼女が所属する劇団「絞り汁」は、“芸術性”を言い訳に、つまらない芝居を長時間見せるような集団だ。とにかくこの佳代というキャラクターは、ウザくてダサい。そんな小劇団にもかかわらず、実力派女優気取り。風のコネで、ドラマでエキストラ同然の役をもらっても、主役級の振る舞い。デリカシーが皆無なのか、愛人たちを引き合わせ、「愛人同士仲良くしよう」と提案する。「悪いのは全部、風なんだから」と。
しかし、同じ愛人である以上、恋敵。うまくいくはずがない。頻繁にほかの愛人たちと口論になり、そのたびに水やカフェオレなどを顔にぶっかけられる。
だが、彼女が愛人同士仲良くしようとしていたのは、実は風を一緒に殺そうとしていたからだったのだ。
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