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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 極太に生きた男の伝説!『聖の青春』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.400

誰よりも盤上で奔放に、極太に生きた男の伝説! 松ケン主演のノンフィクション映画『聖の青春』

satoshinoseishun003対局に敗れた後の村山は体調を崩すことが多かった。師匠の森信雄(リリー・フランキー)や弟弟子の江川(染谷将太)が看病した。

 クライマックスは村山と羽生との最期の対局となったNHK杯決勝の様子を克明に再現してみせる。このシーンを撮影するにあたって、森監督は松山と東出に実際の対局で行なわれた棋符を一手一手すべて正確に暗記するように伝え、2時間30分にわたってカメラを一度も止めることなく長回しで撮り切った。実際の映像は編集されているものの、それでも2人の闘いの緊迫感がスクリーンから伝わってくる。森監督が「村山聖が降りてきたかと思った」と振り返るほど、撮影現場は異様な空気に包まれたという。

 もうひとつ、印象に残るシーンがある。村山は無類の少女漫画好きで知られていたが、劇中では行きつけの古本屋で『イタズラなKiss』の最新刊を探すシーンが盛り込まれている。将棋の順位戦、そして病気とも闘い続けていた村山にとっては心のサプリメント『イタキス』と同じくらい、古本屋に勤めている女の子(新木優子)は気になる存在だった。何でもない会話を交わすだけで、学園生活を満足に送ることができなかった村山はドキドキしてしまう。これは原作にはなく、映画での創作エピソードだ。森監督は生前の村山を知る関係者を詳細に取材した上で、「孤独に死と向き合っていた村山には、誰にも見せなかった顔があったはず」という想いから、恋愛と呼ぶには淡すぎるこのエピソードを加えている。壮絶な闘いの日々を送る村山が垣間見せた純朴な一面が、とても愛おしく感じられる。“伝説の男”として語り継がれる村山聖とは異なる、ひとりの生身の男・村山聖がスクリーン上には確かにいた。
(文=長野辰次)

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『聖の青春』
原作/大崎善生 脚本/向井康介 監督/森義隆 
出演/松山ケンイチ、東出昌大、染谷将太、安田顕、柄本時生、鶴見辰吾、北見敏之、筒井道隆、竹下景子、リリー・フランキー
配給:KADOKAWA 11月19日(土)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
(c)2016「聖の青春」製作委員会
http://satoshi-movie.jp

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