トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 銭湯に託した熱い愛を語る
映画『湯を沸かすほどの熱い愛』公開記念インタビュー

銭湯を舞台にした宮沢りえ主演作は海外でも話題! 新鋭・中野量太監督が銭湯に託した熱い愛を語る

yuwowakasu03幸野家の人々が熱海旅行中に出会うバックパッカーの青年・拓海(松坂桃李)。彼も「幸の湯」にとって欠かせない一員となる。

■コミュニティー空間としての銭湯のこれから

――今も中野監督は銭湯に通っているとのこと。銭湯の素晴らしさを改めて語ってください。

中野 最近はたまにしか行けていませんが、やっぱり疲れたときは自宅の狭い浴槽ではなく、銭湯の広い湯船に浸かりたくなりますね。ダイエットしたいときも利用しています。子どもの頃は「銭湯の番台に上がっているオバさんは男の裸を見て恥ずかしくないのかな」なんて不思議に思っていました。今回の撮影中に、ボクも番台に上がってみました。番台って、浴場中が見渡せて眺めがいいんです。撮影の最終日には松坂桃李くんも番台に上がって喜んでいました。番台って、誰もが一度は座ってみたい場所みたいですね(笑)。あと、僕は銭湯の帰り道も好きなんです。風呂から上がって外を歩く機会ってあまりない。湯上がりに髪がまだちょっと濡れたまま家に帰るのっていいなと。冬だと外は暗くて寒いんですが、自分の家へこれから帰るんだという気持ちが際立ってくる。ボクは帰り道も含めて、銭湯は楽しいなと感じています。

――銭湯と同じように、街の映画館も知らない人たちが集まって、笑ったり泣いたり感情をあらわにする一種のコミュニティースペースだと思うんです。銭湯と映画館って、どこか通じるものを感じさせます。

中野 ミニシアターはお客さんとの距離感も近くて、確かにそんな感じがします。上映後などに気軽に話ができると面白いでしょうね。

――昔ながらの銭湯や街の映画館は年々姿を消しつつありますが、これからどうなっていくと中野監督は予測していますか?

中野 最近は若い人が古い銭湯の経営を受け継いでいるというケースがあるみたいです。銭湯の経営者とは血の繋がりのない若い人が、意欲を持って経営を引き継いで営業しているそうです。川口市の「喜楽湯」や京都市の「サウナの梅湯」はまさにそうです。新しく改装して機能的な銭湯にするのか、それとも古いまま残すのか、どちらが正解かは決められませんが、頑張っている銭湯は多いみたいですね。

――川越市の映画館「川越スカラ座」は2007年に一度閉館したものの、地元の若者たちがグループ経営する形で営業を再開しています。ヤル気のある若者たちが血縁にかかわらずに、街の公共財産を受け継ぐケースが増えていくといいですね。

中野 そういう映画館もあるんですね。いい話だなぁ。若者の映画離れが進んでいるなんて言われましたけど、『君の名は。』はあれだけ大ヒットしているわけですから、内容が面白ければ映画館に足を運ぶ予備軍はちゃんといるってことですよね。映画界の将来は決して暗くないとボクは思っています。

――オリジナル脚本で商業デビューを飾るわけですが、今後の抱負について聞かせてください。

中野 これまでオリジナル作品にこだわってきたので、基本はオリジナルを作っていきたいと思っています。でも、前作『チチを撮りに』から『湯を沸かすほどの熱い愛』まで3年ほど時間を要したように、どうしてもオリジナル作品をゼロから立ち上げていくのは時間も労力もかかってしまうんです。「次もオリジナルで撮っていいよ」と言われても、なかなかすぐには出来ない。今回の『湯を沸かすほどの熱い愛』に全力を注いだばかりですし(苦笑)。でも、それではプロの映画監督としては食べていけない。なので、面白い原作ものがあれば受けますし、その間にオリジナルの企画も温めて、ここぞというときにオリジナル作品で勝負できるといいなと思っているんです。人と人との関わりをテーマにした面白い話は、いくらでも作れる自信はありますので。

(取材・文=長野辰次)

yuwowakasu04

『湯を沸かすほどの熱い愛』
脚本・監督/中野量太 主題歌/「愛のゆくえ」きのこ帝国 
出演/宮沢りえ、杉咲花、伊東蒼、篠原ゆき子、駿河太郎、松坂桃李、オダギリジョー 
配給/クロックワークス 10月29日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
(c)2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会
http://atsui-ai.com

nakano10240101

●なかの・りょうた
1973年京都府出身。日本映画学校の卒業制作『バンザイ人生まっ赤っ赤』(00)が日本映画学校今村昌平賞、TAMA NEW WAVEグランプリなどを受賞。助監督やテレビディレクターを経て、6年ぶりに撮った短編『ロケットパンチを君に!』(06)がひろしま映像展グランプリなどに輝く。35ミリフィルムで撮影した短編『琥珀色のキラキラ』(08)の後、初めての長編『チチを撮りに』(12)がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭監督賞を受賞、ベルリン国際映画祭に正式招待されるなど高い評価を得た。2013年のTAMA CINEMA FPRUMでは「中野量太監督特集−作品に息づく人生賛歌」として『バンザイ人生まっ赤っ赤』『琥珀色のキラキラ』『チチを撮りに』が一挙上映された。中野監督自身が執筆したノベライズ版『湯を沸かすほどの熱い愛』(文春文庫)も発売中。

最終更新:2016/10/25 17:00
123
ページ上部へ戻る

配給映画