モノブライト出口博之の特撮自由帳 「こんなのライダーじゃない!」というにはまだ早い!『仮面ライダーエグゼイド』に見る平成仮面ライダーのデザインの魅力とは!?
『仮面ライダーウィザード』(12年)
・放送前
指輪をモチーフにした平成2期における「なんじゃこりゃ!」大賞候補であるにも関わらず、大きなマントを棚引かせたスタイリッシュな立ち姿のインパクトは洗練されたヒーローの貫禄があり、とにかく「強そう」と思わせる何かを醸し出している姿が印象的です。それでも、顔が指輪そのままというのは、大丈夫なんだろうか。
・放送後
魔法を大々的に取り入れたド派手なアクションは想像通りカッコ良かったのですが、惜しむらくは「結局はライダーの強さというよりも魔法の強さ」が突出していた印象。物語の主軸が魔法バトルものではないのでお門違いかも知れませんが、魔法ってジャンケンのようなシステムじゃないと駆け引きができない気がします。特化した能力を使える条件として決定的な弱点を付与されるように。序盤の盛り上がりは目を見張るものがありましたが、終盤において惜しさが目立ったなんとも惜しい作品。ビーストは最高にカッコいい。
『仮面ライダー鎧武』(13年)
・放送前
フルーツと武将。みかんと鎧。それが仮面ライダー。一体何が起こっているんだ。ここまでくると誰しもが容易に想像できる「仮面ライダーらしさ」を意図的に排除し、新しい仮面ライダーを作る気概を感じるデザインでした。
・放送後
頭からみかんを被って変身する時代が到来。シズル感たっぷりの映像を前に我々は一瞬何の番組を見ているか判らなくなる瞬間がありますが、複数人が同じシステムを用い骨肉の争いを予感させる世界観は、平成シリーズ初期を思わせるハードでシリアスな作風で、ジューシーなヒーローというギャグ寄りな面白さに引きずられない作劇はお見事。動くとカッコいいのは鎧武よりも斬月に軍配が上がります。話題性、インパクト、放送後の印象やその後の展開、平成シリーズヒットの法則の王道に則っています。
『仮面ライダードライブ』(14年)
・放送前
「仮面ライダーらしさ」からの脱却が「平成仮面ライダー」シリーズの大きなテーマとするならば、『仮面ライダードライブ』における既存シリーズからの脱却ポイントは「バイクに乗らずに車に乗る」こと。これじゃ“仮面ドライバー”じゃないか。しかし、デザインはコンセプトカーを彷彿とさせるメカニカルな意匠で、メタルヒーロー路線のメカメカしさは男子心をくすぐり、もはやバイクでも車でもどっちでもいい! 今度の仮面ライダーはカッコいいぞ! と唸らせる説得力があります。こんなヒーローを待っていた!(放送直前の私の心の叫び)
・放送後
ヒーローらしさ、ドラマのテンポ感、アクション、どれを取っても面白く、これぞ王道の特撮ヒーローと言っても過言ではありません。しかし、本格的に盛り上がりを見せるのは2号ライダーポジションの仮面ライダーマッハの登場と、敵側の幹部キャラ・魔神チェイサーの秘密が判明するあたりまで待たなければいけません。序盤のテンションはギアをローにして走っている状態なので、トップギアに入るのが若干待ち遠しく感じます。
『仮面ライダーゴースト』(15年)
放送前
恐山のイタコ的な発想で歴史の偉人を憑依させて戦う、フードを被った仮面ライダー。日本のヒーローにはあまり見られないタイプのストリート感溢れる意匠は、海外のダークヒーローを思わせる存在感があります。この時期、巷を席巻していた妖怪ブームがイメージ元か? という邪推もあったりなかったり。
放送後
仮面ライダーらしさから対極に位置していると思いきや「一度死んでいる=普通の人間ではない」という状況は昭和仮面ライダーシリーズに通じる設定であり、偉人の魂を憑依させる点もこれまでの仮面ライダーの歴史(魂)を受け継ぐ、と読み取ることができます。放送中に仮面ライダーシリーズ45周年を迎えたことからもわかる通り、ゴーストは正しく「仮面ライダー」なのです。
ここまで、09年か015年まで振り返りました。何度も言いますが、私の主観が多く含まれている部分(と言うかほとんど)がありますので「そんな風に見てないんだけど!」というお気持ちも重々承知しておりますので、抜いた刀を一旦お収め頂ければ幸いです。
検証するまでもありませんでしたが、『仮面ライダーW』から『仮面ライダーエグゼイド』までもれなく「放送前の賛否分かれる話題性」から「放送後のインパクト」が同じ流れになっています。仮面ライダーシリーズが絶えず挑戦する新機軸の現れ、ということなのですが、この新機軸の本質とは一体なんなのでしょうか。
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