昼ドラ並みの泥沼愛憎劇『Empire 成功の代償』をヒットに導いた、“ダイバーシティ問題”とは?
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アメリカン・ドラマは、総じてクオリティが高い。特に近年はネットワーク局、ケーブル局、さらに配信サービスの台頭で、映画並みのスケール感を持った作品もザラにある。一昔前まで映画俳優がテレビシリーズに出演するのは都落ちと捉えられていたが、今では映画スターのドラマ出演もまったく珍しくなくなった。世界配給は当たり前となり、たくさんのドラマが日本でも気軽に見られるようになっている。それに加えてここ数年、ハリウッドではダイバーシティ(多様性)についての意見が飛び交い、主要キャストに、非白人俳優を起用する動きが目立っている。これについては、映画界よりもドラマ界のほうが一歩先を行くようで、今ではブラック、ラテン、アジアンと、さまざまな人種の俳優たちが、主演や主要キャラクターとしてキャスティングされている。こうした波に乗って、2015年の3月にスタートして以来、12週連続で視聴率をアップさせたという驚異的なヒットを記録したのが『Empire 成功の代償』だ。
音楽業界を舞台に、スラム出身のヒップホップ・アーティストから巨大音楽レーベルのCEOにまで上り詰めたルシウス・ライオンとその家族の愛憎劇を描いた本作は、映画『チョコレート』や『プレシャス』『大統領の執事の涙』等を手掛けた映画監督リー・ダニエルズと、ジュリアン・ムーア主演のテレビ映画『ゲーム・チェンジ 大統領選を駆け抜けた女』でエミー賞作品賞・脚本賞を受賞し、俳優としても活躍するダニー・ストロングがタッグを組み、さらにマドンナなどの楽曲をプロデュースした名プロデューサー、ティンバランドが音楽総監督を務めるという、まさに今のアメリカテレビ界を象徴するような豪華スタッフが贈るドラマだ。当然、音楽はかなりハイクオリティで、番組のサウンドトラックはグラミー賞にもノミネートされた。
『Empire』はブラック・カルチャーを真正面から描き、その主要キャラクターの多くがアフリカ系アメリカ人という、従来のドラマのパターンとは真逆のキャスティングも大きな成功を収めた理由のひとつ。これまでも、ウィル・スミスの出世作となった『ザ・フレッシュ・プリンス・オブ・ベルエア』など、ファミリー・コメディのジャンルでは黒人俳優メインの作品はあったが、ドラマシリーズで本格的にブラック・カルチャーをフィーチャーしたこと、黒人社会から高く支持され、それが爆発的なヒットにつながっている。これもまた、ダイバーシティを絶妙に具現化した結果といえるだろう。
そもそも、音楽にはかなり力を入れている本作だけに、ゲストもかなり豪華。グラディス・ナイトやパティ・ラベルといった重鎮、メアリー・J・ブライジやスヌープ・ドッグといったヒップホップ界のスター、エステルやリタ・オラといった若手スター、さらにナオミ・キャンベルやジェニファー・ハドソン、コートニー・ラブも出演。シーズン2ではアリシア・キーズやNe-Yo、ベッキーGなど、シーズン3では歌姫マライア・キャリーも登場し、大きな話題を呼んでいる。
とはいえ、日本人的にはラップもヒップホップもブラック・カルチャーもいまいちなじみが薄いという人は多いだろう。だが、華やかな音楽業界の舞台裏を刺激的に描いたストーリーはかなり興味深く、見応えもある。音楽やカルチャーに詳しくなくても、十分に魅了されるだけのクオリティがあるのだ。だが、何よりこのドラマの肝となるのが、家族の愛憎劇だ。
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