フリースタイルバトルブームの“台風の目” ブラジル人ラッパーACEが語る、「エミネムの壁」と「果てなき野望」
#インタビュー #ACE
――そんな渋谷サイファーが、なぜここまで広まったと思いますか?
ACE 「すごいから」じゃないですか? 「なにこれ?」って、驚きがある。黒人が日本語ラップしている。腕の細いドラマーが、ぶっとい音で叩いている。ギターはめっちゃオタクなのに、なんか色っぽい。女の子のラッパーもいて、ジャンルの幅がめちゃくちゃ広い――。視覚にも聴覚にも、響きますよね。そんなごちゃまぜ感に加え、まぁ僕らのエンタメスキルですかね(笑)。
――そのエンタメスキルが、ACEさん最大の持ち味でもありますよね。
ACE やっぱり『FSD』の影響は大きいですね。ここで初めて言いますけど、山下新治名義(ACEは『FSD』に般若の通訳役・山下として出演している)で、結構なビッグネームの映画出演オファーが来たんですよ(笑)。結局、スケジュールが合わなくて出られなかったんですが、山下名義でオファー来るって、すごい影響力ですよね。でも、僕らがやっていることって、本当にずっと変わっていない。内容的には進化し続けているけど、方向性やメッセージはブレていない。にもかかわらず、『FSD』やるまで、メディアは見向きもしなかった。遅いよ、日本のメディアは! 何年待ったか……(笑)。
――その『FSD』がきっかけで、現在のさまざまなバラエティ番組への出演につながったと思うんですが、DOTAMAさんと一緒に出演した『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)の生放送でのフリースタイルは、かなりリスクがありましたよね。撮り直しができないし、禁止ワードを言ったらアウトです。さらに、情報バラエティだと、番組側がACEさんの見せ方を作るので、本来のACEさんのスタイルと齟齬が生じる。
ACE もちろん、リスクはありました。でも、単純に面白そうだなと思って。だって、『ヒルナンデス!』で俺がラップしてるって、おかしいじゃないですか?(笑) ただ、バトルをテレビでやると、当然、禁止ワードがある。自由表現じゃないって嫌がるラッパーもいますが、僕はそのルールの中で、どれだけ自分がうまくやれるかというスリルを楽しむのも一興かなと思っています。最近は「口説きMCバトル」とか、お題のあるバトルも多くなってきていますし、そういったテーマの中で、いかに格好良く見せられるかというのが大事になってくる。おちゃらけて伝わるのは僕たちの本意ではないですが、決められたルールの中で、どれだけ言葉遊びを楽しめるか、ですね。
――一方で、テレビに出て“タレント性”を求められるのを嫌がるアーティストも多いですよね。
ACE 僕はぜんぜん嫌じゃないです。もっとテレビに出たい! だって、テレビに出たらモテるもん(笑)。曲のイメージが崩れるのを懸念する気持ちはわかります。でも、ある程度、露出をしているのに、中途半端にメディアに出るのを嫌がるのは、本人がアーティスティックじゃないから。般若さんの『FSD』での振り切り方がいい例で、逆に彼のアーティスト性を高めている。僕は、ラッパーっていう職業が、もっと芸能界に食い込んでいったほうがいいと思います。テレビで出し尽くしちゃって、飽きられる怖さっていうのもあるかもしれない。ただ、それはスキルの問題ですよね。フリースタイルなんて、毎回変わるワケで、飽きられるはずがない。僕のフリースタイルは一生続くから、今のフリースタイルブームに対しても「仕事増えるぜ」「ありがとー!」って程度で、僕のスタイル自体は何も変わってない。
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