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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 法廷ドラマ『グッド・ワイフ』
ベテラン海外ドラマライター・幕田千宏の「すごドラ!」

浮気された妻が大変貌! ヒラリー・クリントンをモデルにした法廷ドラマ『グッド・ワイフ』

 ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプがついに直接対決した初の討論会も実施され、ますますヒートアップしている次期アメリカ大統領選挙。アメリカン・ドラマには多くの政治ドラマがあるが、ここでぜひとも押さえてほしい作品が『グッド・ワイフ』だ。もっとも、映画監督のリドリー・スコットと故トニー・スコットが製作総指揮を務める本作は、正統派の政治ドラマとは少々趣が異なり、ベースは法廷ドラマだ。

 主人公となるアリシアは、ロースクールを首席で卒業し、シカゴの大手弁護士事務所に2年間勤めた後、検事である夫ピーターとの結婚を機に家庭に専念していた。良き妻、良き母として家庭を守ってきた彼女だが、夫のセックス・スキャンダルと汚職事件によって人生が急転。懲役10年の実刑となったピーターの莫大な控訴裁判費用と2人の子どもたちとの生活費を稼ぐため、学生時代の友人ウィルがパートナーとなっている弁護士事務所で、13年ぶりに社会復帰する。しかし、世間の目は厳しい。職場ではロースクールを出たばかりの新米弁護士ケイリーと、ひとつしかないジュニア・アソシエイトの座をめぐり熾烈な競争を繰り広げ、事務所の共同経営者でキャリア一筋のダイアンからは冷たくあしらわれる。夫のスキャンダルのせいでどこに行っても好奇の目にさらされる中、弁護士としての実績を上げなくてはならない。だが、そんな過酷な状況の中で、アリシアはどんどん輝きを増していく。

 アリシアを演じるジュリアナ・マルグリーズは、傑作医療ドラマ『ER 緊急救命室』のキャロル役で高く評価され、海外ドラマファンにも、おなじみの実力派女優。シリーズが始まった頃はどこか自信なさげだったアリシアが、意図せぬキャリア復帰によって次第に毅然とした女性へと変化していく様を見事に体現していく。一見上品で控えめながら、その心の内にはしっかりと野心もあり、したたかさも持ち合わせた彼女の美熟女っぷりにも大いに注目だ。

 人生の危機に直面し、その苦難をしなやかに乗り越えていくヒロインをはじめ、共同経営者ダイアンや、調査員のカリンダなど、多彩なキャラクターのリアルな女性像が多くの女性から支持されている本作だが、これはあくまでもドラマの魅力のひとつ。女性視点は本作の主題ではあるが、ひとたび法廷に出れば、女性も男性もない。アリシアが所属する事務所は、さまざまなスペシャリストを擁する大手事務所だけに、扱う案件もいかにクライアントに有利な結果を勝ち取るか、相手弁護士と目まぐるしく駆け引きを繰り広げる民事のみにとどまらず、刑事事件となれば、検察相手にスリリングなバトルを展開する。事務所内では熾烈なポジション争いにさらされ、さらなるキャリア・アップを目指しての独立画策、さらに事務所自体が解体の危機に直面するなど、毎シーズン息つく暇もない。

 そんな生き馬の目を抜くシビアな世界で、時に自分の信念に相反する主張をしなければならないこともあるのが弁護士のツラいところ。法律そのものが理不尽な時もある。そうした不条理とどう折り合いをつけていくのか、法に携わる人間たちのそれぞれの立場での主張や信念、そして葛藤が丹念に描かれ、まさに法廷ドラマの醍醐味がぎゅっと凝縮されているのだ。

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