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実在した“毒家族”映画『エル・クラン』公開記念インタビュー

精神科医が話題の実録犯罪映画をカウンセリング!「家族への幻想は捨てたほうが楽に生きられる」

el-clan03斎藤先生が要注意人物だと指摘する母親エピファニア。海外で暮らしていた次男マキラだが、家族のもとに戻ってしまう。

──斎藤先生の著書『家族の闇をさぐる』では、“家族とは「近親姦防止装置」だ”とあまりにも明快に喝破されています。

斎藤 科学的な視点から見ると、人類は家族という制度を生み出したことで近親姦を防ぎ、また世代という概念を作ることで安定した関係性を得ることができたわけです。もともと家族とは毒性の強いものであって、その毒が強まらないように努めてきたというのが人類なんです。中国の孔子の教えは、礼儀に関するものがほとんどですが、それは親や親の世代と適度に距離を保つための知恵でもあったんです。時代によっても、家族の在り方はずいぶんと変わってきています。万葉集に「金も銀も玉も、どんな宝も子どもには及ばない」と歌った一首があり、親子の愛情は昔から変わらないなんて言われていますが、あの時代の日本は集団婚が認められており、現代の家族制度とはずいぶん違ったものでした。「明治時代は良かった」と言う人もいますが、明治時代の家族制度の中では現代人は息苦しさを感じるだけだと思いますよ。跡取りである長男だけが優遇され、次男以下の男の子や女の子は冷遇されていた時代でもあったわけですから。現代の日本も今の家族制度に固執していると、どんどん少子化していく一方でしょう。フランスではシングルマザーが50%を越えていますが、逆に出産率が上昇するようになってきました。「親としての役割を果たそう」「良い子でいよう」という考え方に縛られ過ぎていると、みんな疲れていく一方で、不幸になるだけです。家族の繋がりはもちろんこれからの時代も続くわけですが、もっと緩やかな家族関係が必要になってくると思いますよ。

──カウンセリングで忙しい斎藤先生ですが、日本では劇場未公開だったグウィネス・パルトロー主演コメディ『恋人はセックス依存症』(12)をご覧になるなど、かなり映画がお好きなようですね。

斎藤 『恋人はセックス依存症』はね、シェアリング(集団セラピー)の様子が描かれているので、患者さんに説明するのが面倒くさいときに、「これを観て」と勧めているんです(笑)。若いころはずいぶん映画を観ましたね。私の生涯ベスト作品は、『ゴッド・ファーザー』三部作と医者が主人公の『ドクトル・ジバゴ』(65)なんです。音楽がいい映画が好きですね。今回、パンフレットに寄稿させてもらった『エル・クラン』は映画としても面白かったので、トラペロ監督の過去の作品もネットで注文しようかなと考えているところです。トラペロ監督は音楽の使い方に才能を感じさせますし、もっと注目されていい監督じゃないですか。機会があれば、またいろいろお話しましょう。

 映画『エル・クラン』以外にも、多彩な話題について語ってくれた斎藤先生。南米のジャングルに潜む食人族を描いたイーライ・ロス監督のホラー映画『グリーン・インフェルノ』(13)はどうやら実話らしいという衝撃の逸話まで会話の中では飛び出した。斎藤先生、また取材させていただく機会を楽しみにしています!
(取材・文=長野辰次)

P9140390診療の合間にインタビューに応じてくれた斎藤学先生。動物行動学から少子化問題まで、話の内容は実に多彩。

『エル・クラン』
製作/ペドロ・アルモドバル、パブロ・トラペロ 監督/パブロ・トラペロ 脚本/パブロ・トラペロ、ジュリアン・ロヨラほか  出演/グレルモ・フランセーヤ、ピーター・ランサーニ、リリー・ポポヴィッチ 
配給/シンカ、ブロードメディア・スタジオ 9月17日(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほかロードショー 
(c)2014 Capital Interlectual S.A./MATANZA CINE/EL DESEO
http://el-clan.jp

●さいとう・さとる
1941年東京生まれ。慶応大学医学部卒業後、フランス政府給費留学生、国立療養所久里浜病院精神科医長、東京都精神科医学総合研究所副参事研究員などを経て、95年より「さいとうクリニック」「家族機能研究所」を設立。『「毒親」の子どもたちへ』(メタモル出版)、『「家族神話」があなたをしばる 元気になるための家族療法』(NHK出版生活人新書)、『家族の闇をさぐる 現代の親子関係』(小学館)など多くの著書を執筆している。

最終更新:2016/09/17 18:00
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