「血縁より、とりあえず環境を選ぶべき」という『はじめまして、愛しています。』の至極まっとうな選択
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厳しい視点だと思うんですよね。やっぱりどっかで、血のつながりに対する固執というか「なんだかんだ、それでも実の親と生活したほうがいいんじゃない?」という保守的な概念が、少なくとも今こうしてレビューを書いている私にはあったのだけれど、それを真っ向から否定する展開だったんです。ハジメと泉を対峙させることは、結局一度もなかった。
今後、ハジメが思春期を迎えて「自分はどこから来たのか」「なぜ自分は存在しているのか」といった普遍的な悩みにブチ当たることがあるかもしれません。「なんで自分を、本当の親から引き剥がしたのか」と、信ちゃんと美奈ちゃんを糾弾する日が来るかもしれない。こんなに愛してあげたのに、ハジメは無遠慮に金属バットを振りあげているかもしれないし、理不尽に自分の手首にカッターナイフをあてがっているかもしれない。
それでも、周りの大人たちがみんな「あのとき、最善の判断をしたんだよ」「みんながハジメのことを最優先に考えた結果なんだよ」と一点の曇りもなく言えたら、ナンボかマシな気がするんですよね。産まれてこなかったほうがよかった命が産まれてしまったことは変えられないけれど、その子の人生をナンボかマシにすることはできるかもしれない。
きっと遊川をはじめとする制作陣は取材を通して、こういう親に望まれない子どもの存在をたくさん知ったんだと思うんです。ドラマで奇跡を起こして最大限に手を差し伸べても、「ナンボかマシ」程度にしか回復させてやれないんだろうなと、そういう「愛情が成し遂げられる限界」みたいなものに真摯に向き合った作品だったと思います。
あとはもう、ハジメ自身が戦っていくしかないんですよねえ。たとえば映画『クリード』で、アポロの婚外子として産まれ、アポロの未亡人に育てられた主人公・アドニスは「自分の存在はミステイクじゃないんだ」と証明するためにボクシングをしていました。そういう、自分の存在を証明する何かに出会えれば、きっとハジメにも「ナンボかマシ」以上の人生が訪れるに違いありません。それはたぶん、ハジメにとってはピアノなのかもしれませんね。なんだか、希望が残されている感じがするね。最後の最後まで展開が読めなくてヒヤヒヤしたけど、とってもいいドラマだったと思います。はい。今回はそんな感じで。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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