イラク戦争の“英雄”は裏切り者だった? CIAとテロとの戦いを描く『HOMELAND』
#海外ドラマ #すごドラ!
ストーリーそのものは、テロと戦うCIAの女性エージェントと、テロリストの疑惑をかけられた英雄の攻防というシンプルな構造でありながら、こうしたキャラクター造形によって深い奥行きを生んでいくところが、見れば見るほどハマる仕掛けのひとつであり、このドラマの巧みさだ。そして同様に、キャストの腕の見せどころでもある。キャリーを演じるクレア・デインズは、かつて映画『ロミオ+ジュリエット』のジュリエット役でアイドル的人気を集めたが、実は若い頃から演技派として高く評価されていた女優。本作でも、双極性障害を患いながら真実を執拗に追い求めるヒロインを体当たりで演じ、その迫真の表情は、いまや“顔芸”といわれるほど。
対するブロディを演じるのは、以前紹介した『Billions』(参照記事)でも主演しているダミアン・ルイス。怪しさ満点で、その真意がつかみにくいキャラクターを実にリアルに演じているが、彼は闇を体現するのが非常にうまく、自身の演じるキャラクターだけでなく、ブロディに関わる人物の闇をも引き出している。この2人の演技バトルだけでも見応え十分だが、それに加えて、キャリーの唯一の理解者であるソールや、死んだと思っていた夫の突然の帰還に戸惑う妻ジェシカやその家族をめぐるドラマの部分においても、決して手を抜いていない。シーズンが進むにつれ、米国本土はもちろん、アフガニスタンやドイツと、その舞台のスケールは広がっていくが、基本となる人間ドラマがしっかりと確立されているのも、このドラマが高く評価されているポイントだ。
正義というものの曖昧さ、ある一面では白であるものが、別の視点から見れば黒でしかない、決して単純には割り切れないテロとの戦いの難しさを一貫して描いているのが、リアルな国際情勢を反映させながら、きちんとエンタテインメントとして成立させているのも、このドラマの秀逸さ。最新のシーズン6では、現在大統領選を戦っている真っ最中のヒラリー・クリントンとドナルド・トランプをモデルとしたキャラクターも登場するとのことなので、今のうちにぜひともチェックしてほしい。
★このドラマにハマった人におすすめ!
『24-TWENTY FOUR-』
『MR.ROBOT/ミスター・ロボット』
『クワンティコ/FBIアカデミーの真実』
●まくた・ちひろ
映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin
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