メリー喜多川・ジャニー喜多川の姉弟は、足利尊氏・足利直義兄弟 !? “お家騒動”として眺めるSMAP騒動の歴史学
――「週刊文春」誌の報道をきっかけにして2016年頭からメディアを騒がせ、ついにこの8月、グループ解散を発表したSMAP。さまざまな疑惑が噴出し、解散発表後もいまだに火がくすぶり続けているが、この騒動をただの芸能ゴシップとしてではなく、芸能界有数の大手プロ・ジャニーズ事務所が巻き起こした、血で血を洗う“お家騒動”として見立ててみたら? ジャニーズ事務所は、二頭体制の実力派武家? 飯島マネージャーは、その下で有能ゆえに抜擢されながら、謀反を起こした家臣? 歴史に学ぶ、SMAP騒動の原因、そしてこれからを紐解いてゆく。
それはまさしく、戦国時代の“お家騒動”さながらであった。
2016年1月、日本中を騒がせた「SMAP解散」報道。「SMAP育ての親」ともいわれるジャニーズ事務所のマネージメント室長(当時)の飯島三智女史(59歳)が事務所を退社するに伴い、中居正広、稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾の4人が共に独立を企て、独立に反対する木村拓哉と分裂危機にあると報じられたのだ──。
SMAPをここまで導いた飯島女史は、入社当初は単なる電話番だったという。ところが、ジャニーズ事務所がジリ貧となっていた90年代初頭のアイドル氷河期に、鳴かず飛ばずだったSMAPを担当、現在のポジションにまで育て上げ、事務所に莫大な利益をもたらしたという。その手腕がジャニー喜多川社長からも認められ、11年からは山下智久、Kis-My-Ft2、A.B.C-Zのほか、ジャニー氏がプロデュースしたSexy Zoneをも担当することとなっていく。
ジャニーズ事務所は、現在84歳のジャニー喜多川氏が社長としてタレントの発掘・プロデュースを行い、89歳の姉・メリー喜多川氏が副社長として経営実務を担う、二頭体制の組織であることはよく知られた事実。しかし社長も副社長も高齢ゆえ、おのずと近年では、“跡目争い”が社内外で意識され始めていた。ジャニー氏には子どもはいない。そこで有力候補とされていたのが、メリー氏の一人娘・藤島ジュリー景子氏(51歳)である。
順当にいけば、ジュリー氏が後を継ぐことになるのだろう。しかし、飯島女史の台頭は、ジュリー氏をおびやかした。飯島女史は、担当するタレントとSMAPとのバーター出演を盛んに行い、“飯島派”を形成。ファンの間では、「飯島派のタレントは、“ジュリー派”のタレントとは共演できない」なるウワサがささやかれ、徐々に各種メディアで両者の対立疑惑が報じられるようになっていく。
盤石と思われた飯島女史の形勢に陰りが見え始めたきっかけは、「週刊文春」(文藝春秋/15年1月29日号)におけるメリー氏のインタビュー記事だといわれている。メリー氏はそこで、「私の娘が(会社を)継いで何がおかしいの?」と憤慨し、次期社長は娘のジュリーだと明言。さらに、突然飯島女史を呼び出し、「SMAPは踊れない」「飯島に踊りを踊れる子を預けられない」と侮辱した上、「もしジュリーと飯島が問題になっているなら、私はジュリーを残します。自分の子だから。飯島は辞めさせます」と記者に宣言したのだ。
我が身を顧みず社の立て直しに貢献していながら、恥をかかされた形となったこの一件によって飯島女史は、前述の独立画策へと動き始めたともいわれている。それはおのれを取り立ててくれた恩義ある主君への謀反。いわば下克上とさえ呼べるものだったのかもしれない──。
歴史をひもとけば、古今東西、同様の例はいくらでもあるだろう。しかし、その結末はさまざまだ。血縁に勝てず敗れ去った者、実力が血よりも重んじられ頂点を極めた者、醜い内紛の末にすべて崩壊してしまった組織──。
翻って今回のSMAP騒動の顛末は、ご存じの通りである。1月18日、『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)で5人そろって生出演、メンバーが世間に“謝罪”するというパフォーマンスで、一旦その幕が下ろされることとなった。
このとき草彅は、「今回、ジャニーさんに謝る機会を木村くんがつくってくれて、いま、僕らはここに立てています。5人でここに集まれたことを、安心しています」とコメント。独立を企てたとされる、木村以外の4人は、木村の勧めでジャニー氏に頭を下げ、飯島女史には付いていかないことを誓ったというわけだ。そして飯島女史は、ひっそりと2月に退社。実力者が血に負けて、敗れ去ったのである──。
芸能史に残るこのSMAP騒動を、単なる芸能ニュースの枠を超え、過去に幾度となく繰り返されてきた歴史上の出来事になぞらえて比較してみるとどうだろう。そこから、謀反がうまくいくケース、逆にお家騒動を未然に防ぐ防御策などのパターン分析、あるいは教訓めいたものさえ導出可能なのではないだろうか?
そこで本企画では、歴史の専門家や経営、法律のプロに、今回の一件をどのように捉えるべきか、取材を重ねていく。飯島女史はなぜ敗れたのか? SMAPの面々はなぜ謝らなければならなかったのか? その問いに答えてくれるのは、芸能記者ではない。人が織り成してきた人間ドラマの数々──つまり、歴史なのである。
(文/安楽由紀子)
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