付き合ってもう長い彼女が“いい女”に思える瞬間。城定監督の『悦楽交差点』『舐める女』が一般上映
#映画 #パンドラ映画館
七海なな主演の『舐める女』。男の汗の匂いに興奮するカオルは、夫にそのことが言えないまま、物足りない日々を過ごしていた。
もう一本の城定作品は『舐める女』。城定監督の『人妻セカンドバージン』(13)などでも好演していた七海ななが、本作では匂いフェチの若妻を演じている。奥手な性格のカオル(七海なな)は、結婚相談所で紹介された夫(木下桂一)と平穏な生活を送っていた。夫はマジメで優しいが、唯一の不満は潔癖性なこと。使ったハンカチやシャツはすぐ洗ってしまい、男の汗の匂いに無性に興奮してしまうカオルには物足りない。ある日、トイレが詰まったことから修理業者を呼ぶと、修理業者の男(沢村純)は汗を掻きながらせっせとトイレの詰まりを直してくれた。男が首に掛けたタオルは、たっぷりと汗を吸っていた。カオルはタオルの匂いに思わずネコにマタタビ状態となり、気づいたときには男と関係を結んでいた。夫とは正常位でのノーマルなセックスしか経験していなかったカオルは、男に教えられた初めてのオーラルセックスに驚きながらも快感に打ち震える。「セックスに決まりなんてない。好きにやればいいんです」と男に囁かれ、カオルはエクスタシーを感じてしまう。
情事を重ねた男のために、カオルがカレーライスを作るシーンが何とも愛おしい。2人は半裸姿になって、激辛のカレーライスをほおばる。カオルは辛いものが大好きだが、辛いものが苦手だという夫に合わせて、いつも辛さは抑えめにしていた。自分好みの辛さにしたカレーライスを、パンツ姿の男は全身から玉のような汗を流しながら美味そうに食べている。不倫シーンではあるが、自分の本音に正直に生きようとする男女の営みがほのぼのと描かれ、観ているこちらまで心地よくなってくる。
男女間のひと筋縄では済まない関係が軽妙に綴られた『悦楽交差点』と『舐める女』。ヒロインはどちらも夫から見ると貞淑な妻であり、夫の前では本音を押し隠したまま生きている。でも、素っ裸になってのセックスが気持ちいいように、自分の本音を解放することの爽快さにも彼女たちは気づく。貞淑さが魅力だと思っていた妻が、夫の知らない間に本音をやんわりと口にするようになった。夫は付き合ってもう長い彼女が、前よりもいい女になった気がする。両作品とも城定監督の演出の円熟ぶりが堪能できる出来映えだ。監督作が100本を越えても、城定作品は瑞々しさを失わないだろう。
(文=長野辰次)
『悦楽交差点』
監督・脚本・編集/城定秀夫 脚本協力/城定由有子
出演/古川いおり、福咲れん、佐倉萌、麻木貴仁、田中靖教、久保奮迅、沢村純、森羅万象、伊藤三平
配給/OP PICTURES R15+ テアトル新宿にて、8月21日(日)、23日(火)、25日(木)、27日(土)、29日(月)、31日(水)、9月2日(金)夜8時20分より上映
(c)OP PICTURES
『舐める女』
監督/城定秀夫 脚本/長濱亮祐、城定秀夫
出演/七海なな、青山真希、富沢恵、木下桂一、沢村純、麻木貴仁、森羅万象
配給/OP PICTURES R15+ テアトル新宿にて、8月21日(日)夜8時20分より『悦楽交差点』と同時併映
(c)OP PICTURES
■OP PICTURES+フェス2016
ピンク映画の最大手・大蔵映画の新プロジェクト。ピンク映画の魅力を多くの人に知ってほしいという想いから、ひとつの企画でR18とR15の2バージョンを制作し、R18を成人映画館中心、R15を一般劇場で公開するというもの。8月20日(土)~9月2日(金)まで連日夜8時20分から選り抜きの作品全9本の中から日替わりで2本が同時上映される。中でも山内大輔監督、朝倉ことみ、川瀬陽太主演による『よみがえりの島』は昨年のピンク大賞優秀作品賞、同監督賞・脚本賞、同主演・新人女優賞、同男優賞などを受賞した感涙作として評価が高い。
http://www.okura-movie.co.jp/op_pictures_plus
『パンドラ映画館』電子書籍発売中!
日刊サイゾーの人気連載『パンドラ映画館』が電子書籍になりました。
詳細はこちらから!
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事