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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.387

重力も人種の壁も乗り越えて、自由になりたい! ナチスと闘った黒人選手の葛藤『栄光のランナー』

eiko-runner03ヒトラーに寵愛された女傑レニ・リーフェンシュタール(カリス・ファン・ハウテン)。彼女はヒトラーの思惑に反してジェシーをカメラで追う。

 オリンピック出場を果たした選手たちは、国家間の思惑も、過去の因縁も、地球の重力も、そして自分の肉体の限界すらも振り切って、走り、跳び、闘う。オリンピック選手たちの躍動ぶりが美しいのは、彼らが国家代表だからではない。彼らはあらゆる壁を乗り越えて、ちっぽけな偏見や限界の向こう側を見せてくれるからこそ、ナショナリズム以上の感動を呼ぶのだ。

 ベルリン五輪で国境を越えた友情を育んだジェシーとルッツだったが、ジェシーと一緒に客席に向かって手を振ったことで、ルッツはナチスに睨まれる。第二次世界大戦が勃発すると、ルッツは戦場の最前線に送られ、シチリア島の野戦病院で30歳の生涯を終えることになる。ゲッベルス宣伝相に反対されながらもジェシーの勇姿をフィルムに収めたレニ・リーフェンシュタール(カリス・ファン・ハウテン)だったが、彼女はナチス協力者として戦後は中傷され続けることになる。ベルリン五輪で4冠に輝いたジェシーは意気揚々と米国に凱旋するも、母国で彼が見たのは変わらない人種差別の現実だった。ジェシーもルッツもレニも、時代の波に翻弄されていく。それゆえに、彼らがベルリンの競技場で過ごしたあの短い夏がいっそう眩しいものに感じられる。
(文=長野辰次)

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『栄光のランナー/1936ベルリン』
監督/スティーヴン・ホプキンス
出演/ステファン・ジェイムス、ジェイソン・サダイキス、イーライ・ゴリー、シャニース・バンタン、カリス・ファン・ハウテン、ジェレミー・アイアンズ、ウィリアム・ハート、デヴィッド・クロス、バーナビー・メッチェラート、シャミア・アンダーソン、グリン・ターマン
配給/東北新社、STAR CHANNEL MOVIES 8月11日(木)より日比谷TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
(c)Focus Features (c) Thibault Grabherr
(c)2016 Trinity Race GmbH/Jesse Race Productions Quebec Inc. All Rights Reserved.
http://eiko-runner-movie.jp

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