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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.386

高齢者のセックスや懐エロ特集ばっかでいいの? スクープ報道に注ぐ情熱と誤算『ニュースの真相』

truth-movie03番組オンエア後、メアリーは査問委員会に呼び出されることに。政治的思想に偏向があったかに加え、取材先との利害関係も疑われる。

 あらゆる職種に経済効率が求められるようになり、報道の世界もその例外ではなくなってしまった。スクープ報道をものにするには多くの社外スタッフを養わなくてはならず、また常にスクープをものにできるとは限らない。もしスクープできても、相手が裁判沙汰に持ち込むとさらに経費と労力を奪われることになる。日本でも週刊文春とそれを追う週刊新潮以外の週刊誌は、高齢者向けのセックス特集や懐かしいアイドルのお宝ヌードに誌面の多くを割くようになった。そのほうが安定した部数をキープでき、無駄な経費も使わずに済むからだ。

『ヴェロニカ・ゲリン』(03)で命を張った取材を続ける新聞記者を演じたケイト・ブランシェットが、再びスクープに燃えるジャーナリストを熱演した。彼女が演じたメアリーは実の父親とは折り合いが悪く、ダン・ラザーのことを“理想の父性”として慕っている。メアリーとダン、そして取材チームは、血の繋がった家族とは異なる、同じ志を持つ“新しい家族”として描かれている。だが、CBSの上層部はブッシュ軍歴詐称報道を誤報と認めることで事態の収束を図る。ダン・ラザーが敬愛される国王として統治してきた“最後の王国”はあっけなく瓦解することになる。王国の崩壊は、テレビメディアの落日でもあった。スクープ報道がもたらす興奮と衝撃は、もはや過去のものとなりつつある。
(文=長野辰次)

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『ニュースの真相』
製作・脚本・監督/ジェームズ・ヴァンダービルド 
出演/ケイト・ブランシュット、ロバート・レッドフォード、エリザベス・モス、トファー・グレイス、デニス・クエイド、ステイシー・キーチ、ブルース・グリーンウッド、ダーモット・マローニー 
配給/キノフィルムズ 8月5日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国順次ロードショー
(C) 2015 FEA Productions, Ltd. All Rights Reserved.
http://truth-movie.jp/

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