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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 脳障害と生きる音楽家GOMAのいま
『失った記憶 ひかりはじめた僕の世界』発売記念インタビュー

高次脳機能障害と生きる音楽家・GOMAの覚悟「“紙一重でつながった”僕が果たすべき役割」

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――ほかの患者さんに比べて、GOMAさんの回復は早いほうなんですか?

GOMA ほかの患者さんと比べたことがないからわからないけど、「どうやってリハビリしてきたんですか?」とは、よく聞かれますね。やっぱり、自分が何げなく始めた絵を描くことだったり、音楽だったり、そういう芸事にはポテンシャルを引き上げるような効果があっただろうし、あとは家族が早く気づいて病院に連れていってくれたこと。それと、とにかく身体を動かすことも大切です。ヨガとかサーフィン、 ランニングがよかったみたいですね。

――高次脳機能障害を抱える人にとって、「身体の記憶」というのは、やはりキーワードになるのでしょうか?

GOMA はい、そういえると思います。ただ、脳がこうなってしまってからやりだすのはかなりハードルが高い。だから、そうなる前の予防策として、普通の人も脳を活性化させておく必要があるんじゃないかな。これは認知症とか、脳障害全般にいえることだと思いますね。それに今後、高次脳機能障害を抱える人は確実に増えていきます。医療の進歩に伴い、これまでは亡くなっていた人が、障害を抱えながらも生き延びることができるようになっていますから。

――本の発売に合わせて、東京と大阪でライブも予定されていますが、「事故にサヨナラ」というタイトルには、どんな意味が込められているんですか?

GOMA もう事故に関することを、全部出し切りたかったんです。事故後、自分の新作がなかなか作れない中、映画は自分が関われた作品の1発目で、それを世に出すことで心が軽くなった気がしました。やる前はすごく悩んで、障害を抱えていることを公表していいのか悪いのか、わからなかった。実際、障害のことを知って離れていってしまった人もいましたし。でも、だからって、それを隠しながら生きるのは違うと思ったんです。そこに未来が見えなかった。もうひとつ考えたのは、誰も知らないところに行って暮らすということ。でも、それもそれで、何もせずに、ただ死を待つのも違うと思った。結局、みんな最後は死ぬんだから、その中で自分ができること、与えられた役割を全うしたい。何かにおびえながら生きるなんて嫌だって。なら、自分ができることを全部やらなきゃいけない。ただ、無理しすぎるとダメだから、失敗しながらなんとかやってます。

――映画や個展のほかにも、精力的にライブをこなし、新曲にもチャレンジされています。身体の記憶の使い方がわかって、音楽に対する向き合い方は変わってきていますか?

GOMA そうですね、今までは事故前に自分が作ってきた世界を必死に追いかけてきたんです。ライブをやるってなったら、前の自分の曲を何度も聴いて、そこで使えるものを持ち帰って、次のスタジオまでひたすら練習しての繰り返し……。結局、いま僕ができることは、事故前の焼き増しでしかないんです。でも最近、それも違うかなって思っていて、今の自分の脳でできる、何か新しいものを作りたいという気持ちはあります。ただ、普通の人のように頭で考えたことをすっとやって、それを覚えて、ってできるものではないから、ものすごく時間がかかる。今の脳は前より視覚的な要素が強くなっているので、耳から入ったものはすぐに抜けてしまうんです。どんどんやりたい気持ちがある半面、生活の中にそれをどう組み込めばいいのか、どういうやり方がベストなのか、その方程式が、音楽についてはまだ見つかっていないんです。でも、絶対に何かあるはずなんです。今はそれを模索中ですね。

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