あの石原慎太郎でさえ翻弄……小池百合子新都知事、“都議会のドン”相手にどう出る?
#週刊誌 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
さて今週の第1位は、小池新都知事が乗り込む東京都という伏魔殿を欲しいままにしている、内田茂なる「ドン」の存在を報じたポストと文春の記事。
昔から、どんな業界でも「ドン」という存在がいたものである。ほとんどこの手の黒幕には実態はなく、ただ何もしないでいると、そばにいる連中がその人間の考えを忖度してあれこれやるうちに、怖れられる存在になっていくのである。
いま騒いでいる内田某も、顔や言動をテレビなどを通じて見ているだけだが、さほどの人物とは思えない。田舎のおっさんか、夜店のテキ屋のような風情であるが、怖がらせる仕掛けがうまいようではある。
ポストによると、都庁のベテラン職員たちは彼のことを、畏怖を込めて「神田大明神」と呼ぶそうだ。
「都の重要政策から副知事、局長人事まで、内田都議の承諾がなければ一歩も進まない」(都庁関係者)
都知事選に一番に名乗りを上げた小池百合子氏が推薦を得られなかったのは、「オレの言うことを聞かない候補はダメだ」と、内田氏が反対したからだそうだ。その代わりに、彼の言うことを聞く傀儡候補として、増田寛也氏を立てたという。
自民党東京都連が所属議員に対して<非推薦の候補を応援した場合は除名等の処分>という恫喝文章を出したのも、都連幹事長である内田氏の名前があったから、威力を発揮したとポストは書いているが、それにしては小池氏の大勝、増田氏惨敗では、内田氏の威光は地に堕ちたのではないか?
小池氏は出馬会見の時、「(都連は)はブラックボックスだ」と語って、内田氏をクローズアップさせてしまった。さらに、都議会の冒頭解散、利権追求チームの創設を公約した。小池氏は「誰かにとって都合が悪い、もしくは不都合なときに捨てられるということが続いてきたように思う」といい、名指しこそしなかったものの、都議会のドンや一握りの幹部による都政運営を改め、「都民ための東京大改革を進めます」とツイートした。ブラックボックスの中心に内田氏がいることを強くにおわせたのだが、本当に彼と刺し違える覚悟があるのだろうか、見物である。
内田氏の口癖は「知事と議会は二元代表制なんだ」であるという。二元代表制という言葉は、憲法にも地方自治法にも出てこないが、知事と議会はどちらも選挙で選ばれる有権者の代表で、知事をチェックする役割の議会は知事と対等な力を持つという意味で使われるそうである。
「事実、都政は、たとえ都知事が何人交代しようと、127人の都議会に君臨するドンの意向に左右される議会の体質と構成が変わらない限り、改革が容易にできないという問題を抱え続けている」(ポスト)
ドンの威光を知らしめたのが、昨年12月に東京・港区芝の名刹、増上寺で営まれた内田氏夫人の通夜と葬儀であった。参加者は、その盛大さに圧倒されたという。
葬儀委員長を務めたのは安倍首相。首相はその日(16日)、防衛省での自衛隊高級幹部会合や皇居での宮中昼食会などの公務の合間を縫って通夜に駆けつけた。
内田流ケンカの作法は、新米知事に就任初日から痛烈な先制パンチを見舞うことだそうだ。都政の絶対君主のように見えた石原慎太郎都知事でさえ、翻弄されたという。
「当選したばかりの石原知事が都議会の挨拶回りをした際、内田氏率いる都議会自民党の控室はもぬけの殻だった。内田氏の指示で知事の就任挨拶をボイコットしたわけです。この事件の後、知事は都議会運営で大苦境に立たされる」(過去5代の知事を取材してきたジャーナリスト)
何しろ東京都のGDPは韓国一国に匹敵し、予算規模(年間約13兆円)はスウェーデンの国家予算に等しいのだから、それだけの巨大組織の運営は都知事1人では不可能だ。そこで、4人の副知事が補佐する仕組みになっている。
石原都知事は、国会議員時代から政策秘書を務めた浜渦武生氏を副知事に起用しようとしたが、内田氏はこの人事案を都議会で否決し続けた。都知事の権限がいかに強大でも、予算案や人事案は議会の同意がなければ通らない。折れたのは知事のほうだった。
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