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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『X-ファイル』がヒットしたワケ
ベテラン海外ドラマライター・幕田千宏の「すごドラ!」

ニッチなSFがなぜ……? 海外ドラマの金字塔『X-ファイル』がヒットしたワケ

『X-ファイル』の成功には、当時の放送局の事情も大きく影響している。まだケーブル局のオリジナル・シリーズも、動画配信サービスもない90年代初期のテレビ界でドラマといえばネットワークが制作するもの。『X-ファイル』の放送局FOXは当時3大ネットワークを追う立場にあり、だからこそ、他局ではリスクが高くて手を出さないSF作品にもチャレンジできた。こうした背景もあるせいか、『X-ファイル』では実験的要素も多い。異星人による誘拐とそれをめぐる政府の陰謀というミソロジーが『X-ファイル』の根幹をなす最大のミステリーだが、基本は1話完結で怪事件を追っていくだけに、毎回取り上げるエピソードはかなりバラエティ豊か。正統派ミステリーもあれば、オカルトあり、ホラーあり、かと思えばキッチュなコメディやスイートでメロウなエピソードもあり、シーズンを重ねるほどに壮大さが増していくミソロジーと相まって、まったく飽きることがない。

 異形すぎる怪物たちも、かなりのインパクトだ。実際20年以上前にスタートした作品でありながら、いま見直しても、その面白さはまったく色あせていない。当時のファッションやガジェットの違いという点での古さはどうしようもないが、むしろその世界観は、今の時代にこそフィットしているといえる。これはまさに実験的作品だった『X-ファイル』が、いまやテレビシリーズのある種のスタンダードになっているという証しだ。

ジャンル・ミックスの先駆け的存在となった『X-ファイル』は、現在に至るまでそのフォロワーといえるドラマが連綿と制作され、モルダーとスカリーは男女コンビもののひな形となり、いまだアメリカのドラマに絶大な影響を与えている。しかし、その絶妙な緩急の付け方、時代を先取りしたような鋭さ、そして個性の強い名物キャラクターは、『X-ファイル』のワン・アンド・オンリーなもの。あり得ない! と言いたくなるようなツッコミどころや、良くも悪くも風呂敷を広げすぎなところまで、すべてをひっくるめて愛さずにはいられないのだ。

ちなみに、今年のアメリカ大統領選で民主党の大統領候補となっているヒラリー・クリントンは、大統領になったあかつきには「X-ファイル」をオープンにするという公約をしている。大統領候補が選挙公約に掲げるほど、現実世界に影響を及ぼしているところも、『X-ファイル』が伝説のドラマといわれるゆえんだろう。

★このドラマにハマった人におすすめ!
『X-ファイル 2016』
『FRINGE/フリンジ』
『SURPERNATURAL/スーパーナチュラル』

●まくた・ちひろ
映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

最終更新:2016/08/19 12:09
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