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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『X-ファイル』がヒットしたワケ
ベテラン海外ドラマライター・幕田千宏の「すごドラ!」

ニッチなSFがなぜ……? 海外ドラマの金字塔『X-ファイル』がヒットしたワケ

 ここ数年、アメリカで大人気なのが、ヒット・シリーズのリバイバル。日本でも大ブームを巻き起こした『24-TWENTY FOUR-』のリバイバル『24:リブ・アナザー・デイ』に始まり、『HEROES:REBONE』『フラーハウス』『プリズン・ブレイク』『ツイン・ピークス』『ギルモア・ガールズ』などの人気ドラマが次々と復活、もしくはこれから復活が予定されている。そんな中でも注目を集めたのが、90年代に大ヒットしたSFミステリー『X-ファイル』の復活作となる『X-ファイル 2016』だ。

 FBIで不可解な事件を専門に捜査するX-ファイル課に所属するフォックス・モルダーとダナ・スカリーを主人公に、ありとあらゆる怪事件を描き、ありとあらゆる奇人・変人が登場する『X-ファイル』。リバイバル作品はサスペンスにアクション、ミステリーにコメディとジャンルにかかわらず制作されているが、復活へのファンの熱量でいえば、恐らく『24-TWENTY FOUR-』以上の盛り上がりを見せたのではないだろうか。『X-ファイル 2016』は、旧シリーズを知らない世代にもわかりやすいように、第1話と第6話の冒頭でモルダーとスカリーによるモノローグでこれまでの経緯が語られ、全6話の中に『X-ファイル』の肝であるエイリアンと政府の陰謀をめぐるミソロジー(神話)を含む、バラエティ豊かなエピソードが詰まった作品に仕上がっている。全6話であれば、これまで『X-ファイル』を見たことのない人でも気軽にトライできる。

 しかし、配慮されているとはいっても、やはり『X-ファイル 2016』を見るなら、その前に旧シリーズをぜひ見てほしい。人気キャラクターのポジショニングや、随所にちりばめられた目配せなどを楽しめるのは、旧シリーズを知っているからこそであり、伝説的な海外ドラマといわれる『X-ファイル』の神髄を楽しめる。

 今も昔も、映画界では大作映画のメインストリームとなるSFだが、『X-ファイル』がスタートした90年代のテレビ界におけるSFの立ち位置は、ニッチでカルトな弱小ジャンルにすぎなかった。当時のテレビシリーズというのはあくまでドメスティックなものであり、現在のように世界配給が当たり前で映画並みの予算を組めるわけでもなく、莫大な予算がかかる割にマイナーなSFをドラマにするのはリスクが高かった。そんな状況の中、『X-ファイル』は異星人やUFOなど、ある種B級テイストなテーマを、アメリカ人が大好きな“FBI捜査官の犯罪ドラマ”に落とし込むことで裾野を広げ、カルトなジャンルを一躍メジャーシーンに押し上げた。クリエイターのクリス・カーターはこの作品で名を上げ、主演のデヴィッド・ドゥカブニーとジリアン・アンダーソンも一躍スターダムに躍り出た。しかし、主演もクリエイターも無名だった作品が、これほどのヒット作になるとは、誰も予想していなかっただろう。

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