「失敗のない青春に価値はない!」日テレ版『時をかける少女』が描く、青春のトキメキ
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だが、ジュリエット役の相原は、破壊的に演技がヘタ。向いてなかったのだ。クラスはバラバラになってしまう。すると、未羽はまたもタイムリープ。「ジュリエットは男がやったほうが面白いのでは?」と提案し、ジュリエット役を深町に替えるのだ。
普通、相原の心情を慮って、たとえタイムリープという武器があっても、彼女がジュリエットのままなんとかしようとするのが、青春ドラマの定石だ。だが、このドラマでは「それでいいの?」と思ってしまうほど、タイムリープはかなり軽く使われる。実は、それがこのドラマの“肝”でもあるのだ。
相原は、代わりに与えられた背景美術で才能を発揮して称賛を浴び、舞台も大盛況。しかし、クライマックスで大きなトラブルが発生する。大事な告白シーンのさなか、天井に挟まっていたバスケットボールが落下し、吾朗の頭を直撃、気絶してしまう。さらに、慌てて駆け寄ろうとした女子生徒がセットに足を引っ掛けてしまい、セットが崩れてしまう。続けて、なんとか成立させようと前に出たジュリエット役の深町の衣装が脱げてしまう始末。クラスメイトが一致団結して作り上げた舞台は、台無しになってしまった。
落ち込むクラスメイトを前に、いつものようにタイムリープしてやり直そうとする未羽。だが、「でも、浅倉くんが気絶する瞬間いい顔してたな」と吹き出す男子生徒がきっかけになって、「翔平くんの最後のキメポーズも最高だった」「おかげで演出を超えたクライマックスだったよ」と楽しそうに言い合うのだ。
そんな光景を見て「このままがいい」と、未羽はタイムリープすることを思いとどまるのだ。
「失敗のない青春に価値はない!」
男子生徒が言うと、「失敗最高!」というコールがクラスを包み込むのだ。
タイムリープが頻繁に軽く行われる設定だからこそ、逆にタイムリープしなかった時の思いに重みが増す。
青春には、失敗がつきものだ。いや、若さゆえの失敗こそが、青春ともいえる。やり直せないからこそのはかなさと煌めきを、やり直せるからこそ逆説的に描いている。
主人公がタイムリープするかのように、作品も何度も何度もやり直されている。何度やり直されても、そのトキメキは損なわれない。青春は、一度きりでは終わらないのだ。
(文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/)
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