共産党バッシングが『ローマの休日』を生んだ? プロの技で不寛容な時代と闘った男『トランボ』
#映画 #パンドラ映画館
自由と尊厳を手に入れるために、トランボは必死で闘い続けた。暴力に訴えるのではなく、タイプライターを叩き続けることで、プロの脚本家として闘い続けた。『ローマの休日』『黒い牡牛』といった名作のみならず、一家の主として妻クレオや長女ニコラ(エル・ファニング)たちと暮らす家を守るために、ギャラの安いB級映画の仕事も断ることなく引き受けた。ペンネームで書くことに抵抗を覚える“ハリウッド・テン”の他の脚本家たちのケツを叩きながら、猛烈な勢いでシナリオを量産した。業界内だけでなく、世間からも冷たい目で見られながら、圧倒的な作品のクオリティーと量とで偏見を凌駕し、トランボはサバイバルし続けた。裁判で勝つか負けるかよりも、自分と家族をちゃんと食べさせていけるかどうかがトランボにとってはいちばん大事だった。それがトランボなりの闘い方だった。
映画の世界に政治の嵐が吹き荒れたのは、米国だけではない。米軍の占領時代にあたる1946年~1948年には、日本では“東宝争議”が起きている。中でも1948年の第3次東宝争議では組合員たちが東宝砧撮影所に立て篭り、日本の警察だけでなく米軍の偵察機、戦車まで出動し、撮影所内が戦場になる寸前だった。東宝の人気俳優だった大河内伝次郎、長谷川一夫、高峰秀子らは政治活動を嫌って組合から脱退。このとき東宝第二撮影所(今の東京メディアシティ)が設立され、新東宝が誕生している。一方、スター俳優が抜けた東宝は東宝ニューフェイスを募り、三船敏郎や久我美子らがデビューすることになる。新東宝は1950年代後半にはジリ貧となり、やがてエログロ路線に活路を求めていく。『トランボ』みたいな実録ドラマ、日本でも作られないだろうか?
(文=長野辰次)
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』
原作/ブルース・クック 脚本/ジョン・マクナマラ 監督/ジェイ・ローチ
出演/ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、エル・ファニング、ヘレン・ミレン、ルイス・C・K、ジョン・グッドマン、マイケル・スタールバーグ
配給/東北新社 STAR CHANNEL MOVIES 7月22日(金)より日比谷TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
Hilary Bronwyn Gayle(c)2015 Trumbo Productions, LLC. ALL RIGHTS RESERVED
http://trumbo-movie.jp
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