えげつないまでに欲望むき出し! テレビ界初のウォール街ドラマ『Billions』
#海外ドラマ #すごドラ!
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エンタテインメント大国のアメリカは、どんな職業も見事にエンタメ化してしまうお国柄。以前紹介した『ハウス・オブ・カード』しかり、その昔『CSI:科学捜査班』が大ヒットした頃は、それまで地味な職業扱いだった鑑識志望者が急増するなど、現実世界への影響力も大きい。そんなアメリカのテレビ界で、意外にもこれまであまり描かれてこなかったのが金融業界だ。しかし、映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の大ヒットによって、いまや金融ドラマの企画が急増している。中でも大注目なのが、“テレビ界初のウォール街ドラマ”と評される『Billions』だ。
主人公の一人、ニューヨーク州検事局の検事チャック・ローズは金融事件裁判で81件無敗を誇る人物。そんな彼の元に証券取引委員会のスピロスから、ヘッジファンドの大物ボビー・アクセルロッドの不正に関する情報がもたらされる。しかし相手は全盛期のマイク・タイソン級の大物であり、ニューヨークでは庶民の味方と思われている大富豪だけに、生半可な証拠では体よく逃げられるだけ。起訴するに足る完璧な証拠を手に入れるため、ローズは一計を案じる。一方アクセルロッドのほうも、ウォール街でのし上がってきたしたたか者だけに大胆不敵な人物。ローズの策略に気づきながら、あえてその思惑に乗り、彼を挑発する。
こうしてエリート検事と金融界の大物による熾烈なバトルの幕が開くわけだが、この2人の主人公がどちらも一筋縄ではいかないクセ者であり、それがドラマの重要な魅力になっている。アイビーリーグ出身のエリートぞろいの金融業界で、ホフストラ大学出身というアクセルロッドは、まさにたたき上げの人物。まるでシャーロック・ホームズか!? と思わんばかりのキレッキレの洞察力は、部下からも一目置かれている。9.11をきっかけにその勢力を伸ばした彼だが、犠牲になった遺族の子どもに奨学金を設けたり、消防組合に莫大な寄付をしたりするため、ニューヨークではヒーロー的存在だ。しかしこうした善行の裏には彼なりの思惑があり、冷徹な素顔をのぞかせる。
一方のローズは、まさにエリート中のエリート。父親が金融界にも顔が利く有力者だが、その父とは確執があり、金融犯罪には決して容赦しない。チェスのように先の先まで読んで執拗に標的を追い込み、その実績から末はニューヨーク市長か州知事かといわれる彼は、一見非の打ちどころのないエリートだが、実はドMで、ストレスがたまるとSMクラブに駆け込みたくなる衝動と戦うという、なんとも微妙な裏の顔を持っている。
追う側と追われる側に明確に立場が分かれる2人だが、単純に善と悪で割り切れるものではないのがこのドラマの妙。熾烈な頭脳バトルの中で、互いにスパイを送り込み、相手の弱みを探し出し、他人を巧みに利用し、時に巻き込んだ人物を破滅に追いやるその手腕は、どちらも決してクリーンとはいえないのだ。そんな2人の関係をより複雑にするのがローズの妻ウェンディだ。彼女はローズが検事になる前からアクセルロッドの会社、アックス・キャピタルで働く精神科医で、社員のメンタルケアを担う彼女は会社の秘密を握っている。ローズにしてみれば彼女の存在は捜査に支障を来すものであり、アクセルロッドにしてみればいつ裏切ってもおかしくない存在。彼女が間にいることで、2人の戦いはよりスリリングで、微妙なバランスの下で繰り広げられることになる。
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